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億り人が移住する国マレーシア
マレーシアと聞くと、東南アジア上に位置する様々な民族や文化が混在する観光地が、まず頭に浮かぶのではないでしょうか。
しかし、近年暗号資産(仮想通貨)により巨万の富を築いた、通称「億り人」達がマレーシアへ密かに移住しているようです。
税制でのメリット
彼ら億り人がマレーシアに移住する理由の最たるものが、マレーシアでの「税制のメリット」にあるといいます。
例えば日本における暗号資産(仮想通貨)の税区分は「雑所得」に分類され、4,000万円以上の利益に対して最大「45%」の所得税が発生します。さらには住民税が10%ここに加算されトータルで「55%」の税金を支払う必要が出てきます。
利益の半分以上を税金に取られてしまう実状はトレーダーの頭を悩ませるところです。
これに対して、マレーシアでは外国人「非居住者」に対する税制優遇措置があるようです。
詳細は要確認ですが、マレーシアへ移住後に含み益を利確すると、現地での消費税6%のみが課税されるといいます。
これが現在多くの億り人をマレーシアに駆り立てている最大の理由です。
ただし、注意したいことはマレーシアへの移住や「非居住者」になるためには様々な手続きを踏む必要があり、税理士を始めとした専門家に相談する必要があります。
ニシノカズ氏のマレーシア移住
元ホストでクレジットカードで10万円を入金したところから、資産を1年で6億円近くまで増やした敏腕トレーダー「ニシノカズ」氏。
彼もマレーシアに移住している億り人の一人です。
2018年6月現在では国外へ出国した際に課税される「出国税」に暗号資産(仮想通貨)は含まれていないとされており、思い切りのよいタイミングでマレーシアへ移住したといえるでしょう。
ビットコインのマレーシアでの規制
では、億り人を受け入れる側のマレーシアでは暗号資産(仮想通貨)取引に規制はあるのでしょうか。
規制ニュース1「暗号資産(仮想通貨)取引所ルノの凍結」
2018年1月マレーシアでイギリス発の暗号資産(仮想通貨)取引所「ルノ」の取引用口座が国によって凍結される出来事が起こりました。
マレーシア側は顧客情報、取引履歴を開示するようルノ側に要求しており、それは国が発表している暗号資産(仮想通貨)に関するガイドラインに沿ったものだといいます。
ガイドラインの中には「暗号資産(仮想通貨)はマレーシアでは合法ではない」といった文言があり、これはイスラム教徒が多くを占めるマレーシア特有の事情でもあります。
なぜなら、イスラム教ではギャンブルを禁止しており、暗号資産(仮想通貨)の投機性はギャンブルに近いと認識されているからです。
規制ニュース2「新しい暗号資産(仮想通貨)ガイドラインの発表」
マレーシア政府は2月に新しい暗号資産(仮想通貨)に関するガイドラインを発表しています。
ポリシーの根幹をなす主張が「暗号資産(仮想通貨)活動の透明性を高める」ことにあり、マネーロンダリングやテロ資金などに暗号資産(仮想通貨)が悪用されることに対して資産の調査活動を行う」旨が記されています。
KYC(Know Your Customer)という標語からは、「疑わしきものは調査する」というマレーシア政府の強い意志を推し量ることができます。
マレーシアで暗号資産(仮想通貨)取引に対して具体的にどのような規制がおこなわれたかといえば、身分証の提示が義務付けられました。
- 「顧客の姓名と住所」
- 「生年月日」
- 「国籍」
- 「取引の目的」
など以上の情報を予め提供するように利用者側が求められます。
規制ニュース3「マレーシアの中央銀行が名指しで非難」
「将来のマレーシアの基軸暗号資産(仮想通貨)にする」ことを目標に進められているプロジェクトが「Coinzer」です。
「Coinzer」はマレーシアの地方に水力発電用のダムを建設し、その発電で暗号資産(仮想通貨)のマイニングを行います。
マレーシア中央銀行はこの「Coinzer」を非難する声明を2018年3月に発表しました。
理由として、Coinzerが無許可でマレーシア中央銀行のロゴやマレーシアの紋章をホワイトペーパーをはじめとした資料に載せたためです。
Coinzerは当初ICOを2018年1月に予定していました。中央銀行が非難声明を発表に動いたのは、新しく発表したガイドラインに強く影響を受けていることが推測されます。
マレーシアの暗号資産(仮想通貨)取引所を紹介
日本国内に暗号資産(仮想通貨)取引所があるように、マレーシア国内にも暗号資産(仮想通貨)取引所があります。代表的なものには以下のようなものがあります。
取引所1:「LUNO」
先程ご紹介したイギリス発の暗号資産(仮想通貨)取引所「LUNO」はマレーシアで取引できる数少ない取引所の一つです。
ただ、LUNOは2018年1月の口座凍結依頼長い間入出金ができない状況が続いていました。幸いに、2018年6月現在通常通りに営業されているようです。
取引所2:「Remitano」
「Remitano(レミターノ)」はLUNO凍結事件以来、現地マレーシア人に代替手段として利用されていた暗号資産(仮想通貨)取引所サービスです。
「セーシェル共和国」と呼ばれる東アフリカのインド洋沖の小国で登記が行われています。セーシェル共和国もタックスヘイブンの実施国です。
取引所3:「Bitpoint Malaysia」
日本の暗号資産(仮想通貨)取引所もマレーシアで取引所を開設しています。「Bitpoint(ビットポイント)」は2018年5月より、「Bitpoint Malaysia(ビットポイントマレーシア)」のサービスを開始しました。
現地の事情に熟知している現地企業との合弁で行うことから、日系企業のノウハウと資本力がどう発展していくのか期待されます。
マレーシア人で暗号資産(仮想通貨)を推すキーマンたち
マレーシアでは外貨獲得手段として「暗号資産(仮想通貨)」を奨励する動きと、宗教上の理由で投機として「暗号資産(仮想通貨)」を嫌う動きが混在しています。そこで、マレーシアでビットコインを推している人物を調べてみました。
一人目:「マレーシアの財務大臣」
マレーシアの第2財務大臣である「Minister Johari Abdul Ghani氏」はビットコイン取引の過度な規制は同国の金融分野の発展を阻害するとし、2018年1月にビットコインを規制しない表明を行っています。
二人目:「アマニーアドバイザーズ」
ビットコインではありませんが、マレーシアでICOを行った「ハローゴールド」という会社はアマニーアドバイザーズと呼ばれるマレーシアに本拠地を置くイスラム法学者により承認を得ています。
承認の決め手となったのは「ボラティリティが限定的」「価格決定の曖昧さ」でした。
つまり、マレーシア内のイスラム教勢力に容認されるためにはどの暗号資産(仮想通貨)であっても、イスラム的であることが重要視されるようです。
3人目:「暗号資産(仮想通貨)投資家、Suraya氏」
個人のマレーシア人暗号資産(仮想通貨)トレーダーが運営しているブログもあります。
「Ringgit Oh Ringgit」と題された同ブログはSurayaという女性により運営されていて、ビットコインのみならず様々な金融商品についてまとめられています。
マレーシア政府の見解
2018年初頭においてマレーシア政府は暗号資産(仮想通貨)を法定通貨として承認しないという立場をとりながらも、ガイドラインに沿って透明性さえ高ければその判断は民衆に委ねるといった見解を示していました。
ただ、マレーシアでは5月に選挙がありマハティール首相が政権の座に返り咲きました。
マハティール首相が在任していた20年前、アジア通貨危機が起こりました。その原因は投機。マハティール首相は通貨トレーダーに対してあまりよい印象を持っていないようです。
政権が交代したばかりなので、今後の動向次第では大きく状況が変わる可能性もあります。
本音と建前の間に揺れるマレーシア
税金が安いためニシノカズ氏など多くの億り人を魅了するマレーシア。しかし、メリットだけではなくマレーシアという国家が抱える宗教や、タックスヘイブンを悪用したマネーロンダリングなどを理由に様々な規制も存在します。
政権が交代したばかりで、今後どのような方向に進んでいくのかは未知数ですが、今後も状況に注目していきたいところですね!
仮想通貨の今後