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【弥生】フィンテック戦国時代も日本の会計・申告を支える弥生会計の伝統と進化

弥生インタビュー

弥生株式会社は、会計ソフトを中心とした業務ソフトウェアメーカーです。1987年に「弥生シリーズ」の販売を開始しました。

売上実績No.1※1 の「弥生シリーズ」デスクトップアプリケーション、クラウド会計ソフト利用シェアNo.1※2 の「弥生シリーズ」クラウドアプリケーションを提供しています。今回は、弥生会計の今後の戦略についてマーケティング本部 ビジネス戦略チーム マネジャー 望月様と広報の片山様にお話をお伺いしました。

※1 デスクトップアプリケーション。全国の主要家電量販店・パソコン専門店・ネットショップ2,654店におけるソフト実売統計で、弥生は2018年年間最多販売ベンダーとして最優秀賞を獲得。(業務ソフト部門:20年連続受賞、申告ソフト部門:15年連続受賞)-株式会社BCN調べ

※2 57.0%:クラウドアプリケーション。「クラウド会計ソフトの利用状況調査」-MM総研調べ 2019年3月

創業したてのフリーランスから設立10年以上の企業まで誰もが使えるサービスへ

弥生では2014年からクラウドサービスを始めていますが、そもそも弥生会計をクラウドででも提供しようと思ったきっかけは何だったのですか?

望月:フリーランスや個人事業主の方々において、クラウド会計ソフトのニーズが高まってきたことがひとつの理由です。

MM総研さんが2019年4月に発表した調査結果によると、平成30年(2018年)分の確定申告を実施した個人事業主(調査対象:1万3,172事業者)の内、会計ソフトを利用している個人事業主は32.5%で、そのうちインターネット経由で会計ソフトの機能を利用するクラウド会計ソフトの利用率は18.5%でした。これは、前回の2018年3月調査の14.7%から3.8ポイント増加しています。今後もさらに増加していくと予想されます。

とはいえ、慣れたデスクトップ版を使いたいというお客様も多くいらっしゃいます。そこで、弊社はお客様のニーズに合わせて、完全にクラウドに移行するのではなく、2つの選択肢をご提供したいというのが弥生オンライン開発の経緯と、弥生としての方針です。

時代に合わせた商品を開発しているということですね。今後はオンライン版の比率を増やしていくのでしょうか?

望月:いえ、完全に移行させるということはありません。弊社自身デスクトップ版も今後強化してきますし、クラウド版も強化していきます。いわゆるハイブリッド戦略を取っていく予定です。

ブラウザ(クラウド)のサービスじゃないと様々な連携がしづらく、「デスクトップ版は使いづらい」「機能が古い」といったことが言われますが、全くそんなことはありません。

弊社のデスクトップ版でも、銀行などの金融機関と連携をする仕組みがありますし、Suicaやポイントカードなどと連携できる仕組みを取っています。

そのため、デスクトップ版とクラウド版のどちらを選ぶのかは、完全にお客様の意向に委ねられます。

フリーランスなど、一人または少人数でビジネスをされている方はクラウド版を好まれる傾向がありますし、歴史ある老舗企業や経理の方がいらっしゃる企業では、デスクトップ版を使い続けていただく傾向があります。

ユーザーの意向や環境に合わせて、選べる製品を提供しているということですね。

業界大手の弥生が考えるユーザー目線のサービス作りとは?

弥生オンラインの強みとは?

競合と比べて弥生オンラインの強みはどこなのか教えてください。

望月:弥生オンラインの強みは大きく分けて3つあります。

1つは、サポート体制です。

弊社では、お客様がストレスなく使えるように業界最大規模のカスタマーセンターを用意しています。

通常ソフトウェア会社のカスタマーセンターだと、操作の質問などしか受付けず、会計そのものに関しての質問はサポート対象外というケースが珍しくありません。

しかし、そもそも操作以前に法改正への対処方法や会計処理の仕方にお悩みのお客様は多くいらっしゃいます。そこで、当社ではそこをサポートできるようにしようと考えました。

例えば、仕訳の仕方や消費税改正への対応方法、軽減税率での販売の価格、などといった専門知識が必要な質問にも答えられるカスタマーセンターを用意しています。

そのため、会計知識がない方でも弊社製品は簡単にお使いいただくことができます。

2つ目は、シンプルで誰でも使いやすい操作性です。

どんなに優れた機能があっても、使い方が直感的に分からなければ良いサービスとはいえません。ユーザーインターフェースを極力シンプル化して、誰でも使えるような画面作りを社内では一番重視しております。そこはおそらく業界内でもかなり力を入れている方だと自負しています。

3つ目は、会計事務所・税理士事務所とのネットワークです。

現在、弥生PAPとよんでいる、弥生とパートナーシップを結んでいる会計事務所様は9,000事務所以上(取材当時)あります。

そのため、法人経営者や個人事業主の方が対応しきれない専門的な問題が発生した時に、すぐ対応できる専門家を弥生が紹介できるのも強みです。

完全自動で要望に応えるための、弥生のエコシステム戦略

弥生のエコシステム戦略とは?

※エコシステム:各社の製品の連携・業界同士の連携により大きな収益構造を形成すること

弥生シリーズはフィンテック推進における他社との連携が特徴的ですよね。そこで、プロダクトを拡張していく上での戦略や考え方があれば教えてください。

望月:エコシステム戦略をとっております。特定の会社さんとだけ連携するのではなく、あくまでもお客様が使いやすいように、目的に応じた会社と連携するという戦略をとっています。

要は繋げることによって、弊社自身は、フィンテックプラスアルファの考え方で、要望を完全に自動化するという世界を目指しております。そのためにいろんな会社様と提携を進めており、今後も提携会社を増やしていく予定です。

クリプトリンク(仮想通貨の確定申告用収支計算ツール)との繋がり

エコシステム戦略といえばクリプトリンクさんと連携をされているようですが、連携の過程を教えていただけますか?

望月:八木橋先生(クリプトリンク代表取締役社長)の方から弊社に、「暗号資産(仮想通貨)の申告用の収支計算ツールを作った」とお話をいただきました。弊社のお客様にも一定のニーズがあると判断し、連携準備を進めたのですが、その過程で「プレスリリースやセミナーも一緒にやりましょう」ということになり、連携を深めています。

そんな経緯があったんですね!自社にない機能も外部と積極的に連携することで機能拡張していくことができるということですね。

クリプトリンクインタビュー
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金融機関とは積極的に連携していきたい

クリプトリンクさんとの連携の他には、エコシステム戦略の上で連携に力を入れている分野や業界はありますか?

望月:現在、積極的にやっているのが、銀行など各種金融機関との連携ですね。メディア等で金融機関APIが話題になることが多いですが、基本的にベンダーや我々と銀行が直接契約を結ばないと接続できないようになっています。そのため、社内にも専門のチームがおり、金融機関と交渉をしたり、密に連携をするところは能動的に力を入れてるところです。

また、金融機関との連携も進めながら、お客様の利便性向上を目的に業務系のサービス拡充も引き続き検討と準備をしていきたいと思っております。

金融機関との連携で会計系のデータの取り込みが自動化する。そこが固まった段階で業務系のサービスと連携をすることで会計業務全体が便利になっていくという順で進められているということですね。

弥生に流れるベンチャースピリット

弥生に流れるベンチャースピリットとは?弥生オンラインにも見られるように、弥生株式会社が「新しいこと」を始める際に注意されていることはありますか? 老舗というイメージによる難しさはありますでしょうか。

片山:弥生シリーズが生まれて30年以上が経ちました。おかげさまで、事業者の方々からは一定の認知をいただいています。一方で、ネガティブな意味での“昔ながら”や“老舗”というイメージを持たれている側面があります。

「変化の無い、昔ながらの製品でずっとやっているのでしょ」という風にです。ただ事実は異なっていて、製品も日々進化をしていますし、エンジニアも含めてなのですが、会社の中身は全然そんな雰囲気ではないんです。

ベンチャースピリットとまでは言わなくても、近い文化やマインドセットを代表や経営陣を含めて持っていると感じています。2017年12月から「アルトア オンライン融資サービス」という事業者向けのAI融資の新事業もグループ会社を設立して始めています。

新しいことを始めている一方で、利便性は求めつつもお客様の全員が最新技術を求めているかというと、そんなことはありません。

業務ソフトという特性上、製品に安心感を求める、というお客様も多くいらっしゃいます。現在、弊社の登録ユーザー数はおかげさまで170万を超えました。

弊社が、最新技術を最優先に、たとえば操作画面が日に日に変化したり、ボタンが付いたり消えたりということを仮にやってしまうと、ユーザーは不安になると同時に利便性も低下します。機能追加などの製品アップデートはそのあたりのバランスを考え、行っています。

確かに、弥生会計は歴史が長いのでいつも通りや信頼を求めているユーザーは多いと思います。最新のトレンドを追いつつも、安心感を崩さないというバランス感覚は非常に重要ということですね。

「やよいの青色申告 オンライン」は最初の一年間無料で提供しています

本日は、弥生の中身について詳しく教えていただきありがとうございました。最後に、弥生の最終的に目指すところを教えてください。

望月:まずはお金に関するデータは全て繋ぎこむことを第1段階として考えています。弊社は、「事業コンシェルジュ」というビジョンを掲げています。業務ソフトの提供だけでなく、事業者にとって価値あるサービスを提供していく存在へと進化していくことです。

また、弊社がお客様の困りごとを解決するプラットフォームとなり、かつその自動化ができる仕組みを作ることが最終的に目指すところです。

極端な話、100%完全自動化まではいかないが、弊社の仕組みを入れれば、ある程度困ったときは何かしらの解決がすぐにその場でできる、という世界を目指したいと思っています。

弥生株式会社サイト 事業内容

出典:弥生株式会社サイト 事業内容

弊社は「業務3.0」という世界を目指しています。それは会計業務だけでなく、商取引や給与・労務業務においても、関連する存在をつなぐことによって業務を効率化する、スモールビジネスの為の新たな業務プラットフォームです。

弥生会計が身の回りのお金のことを全部お世話してくれる日が来るのも近いということですね!楽しみです。聞いた話なんですが、「やよいの青色申告 オンライン」は最初の一年無料で試せるって本当ですか?

望月:本当です。個人事業主の方で一番ネックになるのが、確定申告という業務です。毎年3月には、投資でもそれなりに利益を出したら当然、申告をしなくてはいけません。例えば、暗号資産(仮想通貨)の場合は自分で計算してやらなければいけないので大変ですし、外部に頼んでしまうと約10万円ほどかかってしまいます。

弊社では、青色申告をする方向け、白色申告をする方向けのクラウド版の製品を出しています。「やよいの白色申告 オンライン」は永久に無償、完全無料でご提供しています。また、「やよいの青色申告 オンライン」に関しても最初の1年は無料でお使い頂けるようにしてます。

ぜひ一度触って、使っていただければ嬉しいです。もしご自身に合わなくても、費用はかかりません。使ってみていただくと確定申告に対するハードルはぐっと下がるかと思います。

弥生会計の暗号資産(仮想通貨)収支計算を使えば間違いも起こらないですし、何より安く簡単に済ませられるので暗号資産(仮想通貨)の取引をしている人には特に人気ですよね。

本日はたくさんの質問に答えてくださり、ありがとうございました。