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クラウドストライク株:大規模障害は長期的成長を妨げない見込み

ストーリーハイライト

サイバーセキュリティ専門企業のクラウドストライク(CRWD)は、世界的なソフトウェア障害を引き起こし7月は厳しい結果となりました。しかし、同社の革新的なソリューションとサイバーセキュリティ需要の高まりにより、長期的な見通しは明るいとみられます。

サイバーセキュリティ業界は、サイバー脅威の頻度と巧妙さの両方の高まりに直面しています。最近の統計によると、2024年第2四半期の世界的なサイバー攻撃は、前年同期比で30%急増しており、組織は毎週平均1,636件の攻撃に直面しています。

大規模な障害にもかかわらず、アナリストは「強気買い」を継続

クラウドストライクでは先日、航空会社、銀行、ホスピタリティを含む主要顧客向けのサービスを中断させる障害が発生したものの、市場での確固たる地位、高い顧客維持率、革新的なセキュリティソリューションにより、長期的な成長見込みは堅調であるとしています。アナリストは、障害後も「強気買い」を維持し、クラウドストライクに対する確信を維持しています。

最近の障害は一時的な後退か

クラウドストライクは、サイバーセキュリティ市場、特にエンドポイントプロテクション市場におけるリーダーとしての地位を確固たるものにしています。その先進的なファルコン・プラットフォームが成功の大きな理由です。

しかし7月19日、クラウドストライクは、ソフトウェア・アップデートが広範囲に混乱をもたらすという重大な困難に直面しました。マイクロソフトWindows ユーザーの多くが、フライトの遅延、銀行サービスの中断、さらにはスーパーマーケットの問題に直面しました。

ファルコンセンサーの更新プログラムのコーディング・エラーが原因で、Windowsシステムで障害が発生しました。被害は甚大で、全世界で推定100億ドルの金銭的損失が発生しました。投資家がこのニュースに反応したため、クラウドストライクの株価は急落しました。

障害への対応は迅速かつ効果的

しかし、クラウドストライクの対応は迅速かつ効果的でした。同社は速やかに問題のあるアップデートを特定し、数時間以内に修正プログラムを導入しました。1週間以内に、影響を受けたWindowsセンサーの97%以上が正常状態に戻りました。

モルガン・スタンレーのアナリストのハムザ・フォッダーワラ氏は、迅速な対応と限定的な解約リスクにより、長期的な風評被害は最小限にとどまったと指摘しています。重要なのは、この問題がセキュリティ侵害ではなくソフトウェアのエラーであったことで、クラウドストライクの中核となるセキュリティ機能の完全性を同氏は強調しています。

今回の障害により、2024年下半期の新規予約が20%減少すると予測されるなど、いくつかの後退が発生しましたが、既存顧客の切り替えコストが高いため、競合他社に移動する可能性は低いと思われます。加えて、クラウドストライクの迅速な対応とオープンなコミュニケーションにより、永続的な損害を最小限に抑えることができたとみられます。

強力な市場ポジション

サイバーセキュリティ業界におけるクラウドストライクの市場ポジションは、時価総額520億ドルという素晴らしいものです。最新の2025年第1四半期(2024年2-4月期)決算発表では、純新規年間経常売上高(ARR)は前年同期比22%増の2億1200万ドルでした。この好調な業績は、効果的な事業戦略と忠実な顧客基盤を浮き彫りにしています。

また、同期の売上高は、前年同期比33%増の9億2,100万ドルとなりました。これは主に、34%増の8億7220万ドルとなったサブスクリプション売上高によるものです。これらの数字は、クラウドストライクがサブスクリプションモデルによって顧客を獲得・維持し、安定した売上高を確保していることを裏付けるものです。

株式市場はこの業績を反映しています。クラウドストライクの株価は、障害の影響などで過去1カ月間に44%下落したにもかかわらず、過去1年間で37%上昇し、多くの同業他社や市場全体を上回っています。

クラウドストライク株の現在の株価収益率(PER)56.36倍は、特にセクターのPER中央値23.82倍と比較して、同社の将来の成長に対する投資家の期待の高さを反映しています。最近の価格下落は、特に経験豊富な投資家にとって、同社をかなり魅力的な企業にしています。

例えば、キャシー・ウッド氏は最近の下げを利用し、クラウドストライク株を買い増しました。ウッド氏と同氏が率いるアーク・インベストのチームによるこの動きは、短期的な問題にもかかわらず、クラウドストライクの長期的な見通しに大きな確信があることを示しています。

製品ポートフォリオの拡大:長期成長の原動力

クラウドストライクの主力製品であるファルコン・プラットフォームでは、28のクラウドモジュールを提供し、幅広い顧客ニーズに対応する包括的なセキュリティソリューションを提供しています。

その中でも特筆すべきは、Falcon Complete Next-Gen MDRです。これは、完全に管理されたセキュリティ情報およびイベント管理(SIEM)ソリューションであるNext-Gen SIEMを組み込んだもので、これまでにないスピードと精度で侵害を阻止します。

このサービスは、クラウドストライクのファルコン・プラットフォームのパワーと、同社のセキュリティエキスパートによる24時間365日の管理を組み合わせたものです。幅広い統合ソリューションを提供することで、クラウドストライクはサイバーセキュリティのワンストップショップとしての地位を確立し、市場シェアと顧客ロイヤルティを高める可能性があります。

HPEとの協業など戦略的パートナーシップの後押しも

戦略的パートナーシップも、クラウドストライクの製品ポートフォリオを拡大する上で極めて重要です。同社はヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)と協業し、エヌビディア(NVDA)の技術で加速された大規模言語モデル(LLM)を中心に、エンドツーエンドのAIイノベーションを確保しています。

このポートフォリオの拡大が財務に与える影響は、クラウドストライクの将来見通しに反映されています。同社は、2025年度通期の売上高を39億7600万ドル~40億1000万ドルと予想しており、これは前年度の36億5000万ドルから10%近く増加することになります。

アナリストによると、クラウドストライク株は「買い」か?

TipRanksによれば、クラウドストライク株に対する最新のコンセンサス評価は「強気買い」です。これは、過去3カ月間のアナリストレーティングの「買い」29人、「中立」7人、「売り」1人に基づいています。平均目標株価の360.61ドルは、今後12カ月で約66.5%の上値余地を示唆しています。

免責事項

ディスクロージャー

本記事は株式投資分析ツールTipRanksの許可を得て、CrowdStrike Stock (NASDAQ:CRWD): Recent Outage Won’t Derail Long-Term Growth原文の翻訳を中心にまとめています。

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この記事のライター
金融コンテンツ・エディター兼翻訳者。 米国株など米国金融市場を中心に金融関連コンテンツの翻訳・作成にこれまで従事。 日本経済新聞社英文編集部門勤務を経て、約20年にわたり外資系金融機関などで金融関連コンテンツの翻訳・編集業務およびマーケティングサポートを担当。 米国の個人投資家向け金融メディア「モトリーフール」の日本語サイト(今は撤退)で、翻訳・編集業務を担当した経験もあり。 日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)
米国株投資の銘柄分析はTipRanks
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