✔ トルコリラの投資をこれから始める方
✔ 高金利通貨でスワップ狙いの投資家の方
スワップ投資で人気の高金利通貨トルコリラ。
最近は下落が目立っていますが、この10年間トルコの政策金利とトルコリラの為替レートがどのように推移してきたのかを解説します。
これからトルコリラでスワップ投資を行いたい人はトルコの経済状況と金融政策を知って投資を行いましょう。
- トルコリラ円(TRY/JPY)の見通しは、下降リスクはまだあると考えらる
- 理由は、トルコ国内の景気減速、中東情勢、米国との関係といった不透明感が原因
- リラ安と超高金利の影響でトルコ経済は後退局面に入るとの見方が出ている
- スワップ運用は低レバレッジで分散投資がおすすめ
目次
10年前のトルコリラ円の為替レート・政策金利は?
2000年のトルコ危機を教訓に世界金融危機のダメージを最小限に収める
今から10年と少し前の2008年10月24日、サブプライムローン問題を発端とした世界金融危機が起こりました。
世界中の経済がダメージを受ける中、トルコは内外の需要が収縮する実需危機に留まり、金融危機には発展しませんでした。
理由は2000~2001年に起こった金融危機の後、IMF(国際通貨基金)と共に金融構造改革で創り上げた「強い財政・金融」によるものです。リーマンショックが起こった時にトルコ中銀は2000年の金融危機の再来を恐れ、素早い行動を起こしました。
2008年以降は利下げを継続
そのうちの1つが金融緩和です。当時の政策金利は16.75%でしたが、当局は15回にわたり金利を引き下げました。
2010年7月時点では、トルコ共和国史上最低の水準の6%台まで低下しました。
2010年にはトルコはGDPがV字回復、世界の中では中国に次ぐ回復率を見せます。
トルコがIMFの支援なしに世界金融危機を乗り切ったことへの評価は高く、ドイツの日刊紙では「トルコは2050年までに最も裕福なEU加盟国を超えるかもしれない」とまで評されました。
10年前にトルコリラ10万通貨購入!現在の損益は?
今から10年前の2009年にトルコリラ/円を10万通貨購入し、スワップ投資した場合の損益を試算しました。
年 | 月 | 為替レート | 政策金利 | 評価損益 | スワップ損益 | 合計評価損益 |
2009 | 1 | 59.065 | 13.00 | – | – | – |
2010 | 1 | 62.092 | 6.50 | 302,700円 | 761,938円 | +1,064,638円 |
2011 | 1 | 52.443 | 6.25 | -662,200円 | 397,388円 | +799,826円 |
2012 | 1 | 40.682 | 5.75 | -1,838,300円 | 322,524円 | -678,974円 |
2013 | 1 | 48.548 | 5.50 | -1,051,700円 | 229,853円 | +660,003円 |
2014 | 1 | 48.950 | 10.00 | -1,011,500円 | 262,159円 | +962,362円 |
2015 | 1 | 51.234 | 7.75 | -783,100円 | 481,041円 | +1,671,803円 |
2016 | 1 | 41.230 | 7.50 | -1,783,500円 | 391,940円 | +1,063,343円 |
2017 | 1 | 33.192 | 8.00 | -2,587,300円 | 305,102円 | +564,645円 |
2018 | 1 | 29.664 | 8.00 | -2,940,100円 | 262,216円 | +474,061円 |
2019 | 1 | 20.714 | 24.00 | -3,835,100円 | 234,345円 | -186,594円 |
※2009年1月の始値で10万通貨購入
※再投資等は行わない
※政策金利は各年の1月のデータを採用
金利の高さも為替レートの大幅下落で帳消しに
投資を開始した2009年は為替レートが59円台でしたが、10年間で38円も下落してしまいました。スワップでカバーできていた分も2018年の急落で帳消しになってしまった状態です。
しかし、10年前から投資していたことにより、大幅下落でもスワップポイントがあることで強制決済は免れています。
とはいえ、このままトルコリラ/円が下落するようであればマイナスもしくはトントンの状態が続き、投資としての旨みは薄くなりそうです。
今後のトルコリラ円(TRY/JPY)の見通しは?リスクはある?
トルコリラは金利も高く魅力的な通貨ですが、今後どのような値動きを見せるのでしょうか?
結論から言えば下降リスクはまだあると考えられます。
理由はトルコ国内の景気減速、中東情勢、米国との関係といった不透明感が原因となっています。
現在のトルコリラの格付け
2018年8月17日、S&Pはトルコの格付けをジャンク(投機的)等級の「BBマイナス」から1段階引き下げた「Bプラス」としました。見通しは「安定的」と据え置きました。
ムーディーズも同じ日にトルコの長期発行体格付けを「Ba2」から「Ba3」に引き下げ、見通しは「ネガティブ」に変更しました。
格付け会社の経済状況に関する評価
S&Pは格付けを引き下げた理由としてトルコリラの相場変動の大きさと2019年以降の景気後退を指摘しています。
また、ムーディーズの見解ではトルコの公的機関の弱体化が継続していることなどが挙げられました。
格付け会社はトルコの高いインフレ率がトルコ国内の企業に重石となり、国内銀行の融資リスクが増大する恐れがあること、トルコリラのボラティリティが非常に高いことに注目しています。
長期的な金利推移予測
トルコリラはトルコショックにより20%もの大暴落をしたことから政策金利を大幅に上げました。リラ安と超高金利の影響でトルコ経済は後退局面に入るとの見方が出ています。
今後利下げをどのように行っていくのかの舵取りは非常に難しそうです。
今後は利下げをしていかなければなりませんが利下げを行えばリラの下落につながるリスクともなります。いずれにせよ、現在の高金利を続けていくのには限界があるというのが市場の見解です。
トルコリラが抱えるリスク
トルコリラは現在も下降トレンドが継続中ですが、まだまだリスクが払拭されていないのが現状です。
ゴラン高原での米国のイスラエル支持表明に加えてトルコのロシア製武器購入により米国との関係はまだまだ不透明なままです。
さらに政策金利が高いことでトルコ国内の景気が限界を迎えてきており、かといって政策金利の引き下げを行えばトルコリラが下落する恐れもあり、今後の舵取りが注目されています。
下落リスクは依然あり。スワップ運用は低レバレッジで分散投資を
- トルコリラ円(TRY/JPY)の見通しは、下降リスクはまだあると考えらる
- 理由は、トルコ国内の景気減速、中東情勢、米国との関係といった不透明感が原因
- リラ安と超高金利の影響でトルコ経済は後退局面に入るとの見方が出ている
- スワップ運用は低レバレッジで分散投資がおすすめ
トルコリラは超高金利通貨でスワップ狙いの投資家にとっては魅力的な通貨です。
しかし、下落リスクはまだまだ払拭しきれていません。金利が高くても一瞬の下落で利益がなくなってしまいます。
投資スタイルとしては低レバレッジで安全に運用すること、数回に分けて注文を入れてリスクを分散することがおすすめです。
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