✔ いずれ暗号資産(仮想通貨)が法定通貨に取って代わるのか知りたい方
✔ 暗号資産(仮想通貨)で資産管理をしたい方
法定通貨と暗号資産(仮想通貨)は同じ「通貨」と名前がついているように、モノを買うことができるという点などで共通点があります。
ただ、違いもさまざま。そのため法定通貨のみで1ヶ月過ごすのと、暗号資産(仮想通貨)のみで1ヶ月過ごすのはまったく勝手が変わってくるでしょう。
今回は信頼性や管理方法など、法定通貨と暗号資産(仮想通貨)の違いについて検証します。結局のところどちらが優れているのでしょうか。
- 法定通貨と暗号資産(仮想通貨)の違いは「発行者の有無」「発行枚数上限の有無」「価値の保証の有無」「実体の有無」「国境の有無」
- 法定通貨のメリットは「国内ならどこでも使える」「価値が一定」「入手方法が多い」、デメリットは「国の信用や政策で価値が左右される」「国際送金が不便」
- 暗号資産(仮想通貨)のメリットは「国際送金が便利」「世界情勢に左右されない」「セキュリティが強固」、デメリットは「使える場所が多くない」「価値の変動のため決済手段として使いにくい」「法整備が不十分」
- 暗号資産(仮想通貨)は「通貨の三大機能を満たしていない」「購入が法定通貨ありきな仕組み」「知名度が低い」ことから、法定通貨の代用となるのはまだ難しい
目次
そもそも、法定通貨とは?
法定通貨とは、国の金銭債務(お金のかかわる様々なやり取り)において法的に強制通用力が認められるものという定義があります。
日本で言えば「円」が、日本銀行法という法律に裏付けられて発行され、流通している法定通貨。同様にアメリカなどではドル、EU諸国ではユーロが法定通貨です。
法定通貨は、買い物をするときに受け取りを拒否できません。日本のお店で日本円、例えば1000円札での支払いが拒否されることはありませんよね。
ちなみに日本銀行法においては紙幣がメインで、硬貨は補助的なものと定められています。一度の買い物で、同じ硬貨は最大20枚までしか使えないともされているんですよ。
暗号資産(仮想通貨)と法定通貨の違い
ビットコインと1万円札が、どう違うのかというのはなんとなく理解できるでしょう。ですが具体的にそれを説明するとなると、なかなか難しいですよね。
ここでは、暗号資産(仮想通貨)と法定通貨の違いを具体的に紹介していきます。
発行者の有無
暗号資産(仮想通貨)と法定通貨とでは、発行者が違います。
- 法定通貨:国の中央銀行が発行し、国が管理する
- 暗号資産(仮想通貨):明確な発行者は存在せず、プログラムによって自動的で発行・管理される
中央に発行主体が存在しないので「分散的である、非中央集権的である」と言われることも。
また暗号資産(仮想通貨)は、利用者の送金などによってプログラムが実行されて新規に発行されます。暗号資産(仮想通貨)の発行者は、暗号資産(仮想通貨)の利用者であるのかもしれません。
発行枚数上限の有無
法定通貨と暗号資産(仮想通貨)では、発行枚数に上限があるかないかという違いもあります。
- 法定通貨:国の金融政策によって発行枚数が変動し、上限は存在しない
- 暗号資産(仮想通貨):プログラムによって発行枚数上限が設定され、規則的に発行される
法定通貨は景気が悪ければ公共事業などの形で通貨を発行して景気を刺激したり、景気が悪ければ経費削減などで発行量を抑えたりします。
一方で暗号資産(仮想通貨)は上限があることで希少価値が生まれ、価値が高まっていくのです。
価値の保証の有無
法定通貨と暗号資産(仮想通貨)では、価値を保証されているかどうかという違いもあります。
- 法定通貨:国の法律によって発行され、強制通用力を持たされている
- 暗号資産(仮想通貨):価値を保証する機関はない
法定通貨の価値は、その国によって保証されています。しかし暗号資産(仮想通貨)は価値を保証するところがないため、価値は常に変動して一定していません。
暗号資産(仮想通貨)の価値は「お金を払ってでも欲しい」という利用者の気持ちによって成り立っていると言ってもいいでしょう。
実体の有無
法定通貨と暗号資産(仮想通貨)には、実体があるかないかという違いもあります。
- 法定通貨:実体がある
- 暗号資産(仮想通貨):実体がない
日本円には、紙幣や硬貨という実体がありますよね。1000円の買い物であれば、1000円札1枚でも購入できますし、100円玉10枚や500円玉2枚でも購入できます。
暗号資産(仮想通貨)はデータ上の存在なので、実体がありません。ビットコインであれば1BTC、0.1BTC、0.01BTCなど、データ上で自由に細分化して支払いが可能です。
また、法定通貨は財布や金庫などで保管しますが、暗号資産(仮想通貨)は「ウォレット」というデータ上の財布のようなもので保管するという違いもあります。
国境の有無
法定通貨と暗号資産(仮想通貨)では、どこで使えるかという違いもあります。
- 法定通貨:発行されている国でしか使えない
- 暗号資産(仮想通貨):全世界で使える
法定通貨は基本的に、日本円であれば日本でしか、アメリカドルであればアメリカでしか使えません。海外旅行に行く時は、その国の通貨に両替する必要があります。
しかし暗号資産(仮想通貨)はデータ上の存在なので、その価値は全世界で共通。暗号資産(仮想通貨)が使える店舗であれば、どの国であろうと利用可能です。
暗号資産(仮想通貨)と法定通貨を比較
暗号資産(仮想通貨)と法定通貨を比較したものが、以下の表の通りとなります。
法定通貨 | 暗号資産(仮想通貨) | |
発行主体 | 国家 | なし |
信頼性 | 国家による価値の裏付け | なし |
実体 | 紙幣と硬貨 | なし(データ上の存在) |
利用可能な範囲 | 国境線によって限定される | データなので全世界で利用可能 |
管理方法 | 財布や金庫、銀行口座などで管理 | ウォレットと言われるツールで管理 |
このように表形式にすると、法定通貨と暗号資産(仮想通貨)の違いがより鮮明になるのではないでしょうか。
- 発行主体が存在しない
- 分散型のシステムを採用している
暗号資産(仮想通貨)のほぼすべての特徴は、この2点に起因。暗号資産(仮想通貨)について法的に定めた改正資金決済法でも、暗号資産(仮想通貨)の定義は「電子的に記録され、移転できる」とされています。
法定通貨のメリット、デメリット
法定通貨とは、普段私たちが使っている日本円などのこと。メリットといわれても、なかなか実感することはできないかもしれません。
ただ暗号資産(仮想通貨)と比較すると、そのメリットやデメリットがよくわかります。
メリット
普段当たり前に使っている法定通貨ですが、暗号資産(仮想通貨)と比較すると改めてそのメリットがよく分かります。
国内であればどこでも使える
法定通貨の最大のメリットは、その国であればどこでも使えるという点です。
当たり前に思うかもしれませんが、電子マネーなどは店舗によって使える店、そうでない店がありますよね。
暗号資産(仮想通貨)でも、最も取引量の多いビットコインでさえ決済のできない店舗がほとんど。どこにいても使えるというのは、大きなメリットです。
価値が一定であること
買い物に使うお金として考えるとき、価値が一定であることは大きなメリットです。
昨日は100円玉1枚でおにぎりが買えたのに、今日は2枚使わないと買えないなんてことはありませんよね。貯金でも、貯めている間に価値が大きく下がることはありません。
経済政策の失敗によって通貨の価値が大きく下落する「ハイパーインフレ」に陥ることもあります。しかし先進国の日本では、唐突に通貨の価値が大きく下がることはないでしょう。
入手方法が多い
私たちは仕事の対価として日本円を得ます。両親や祖父母からお小遣いをもらう人もいるかもしれませんね。法定通貨は入手方法が多いのもメリットです。
それに対して、暗号資産(仮想通貨)はまだまだ入手方法が限定的。そのため名前は聞いたことがあっても、実際どういうものなのかという理解がなかなか広まらないのが現状です。
デメリット
法定通貨にもデメリットがあるため、暗号資産(仮想通貨)を法定通貨に代替しようという動きを模索している国もあります。
国の信用に左右され過ぎてしまう
日本円やアメリカドルなど、その国の信用が揺るぎないものであれば法定通貨は充分に役割を果たすことができます。しかし内紛が多い、治安が悪いなど国や中央銀行の信用が低い国では、法定通貨の信頼性が著しく落ちてしまうことも。
同じ仕事であっても個人の能力や努力ではなく、国によって実質的に得られる賃金に格差が生じるのは、いいことではありません。
国の政策によって価値が大きく左右されてしまう
金融政策などによっても、法定通貨の価値は大きく変わります。特にドルや円など二国間の通貨での相対価値である為替への影響は顕著です。
輸入規制をするとその国の通貨が出回らなくなるので価値が上がるなど、為替は様々な要因で変動。輸入や海外旅行などは、そのときの相場に大きく影響を受けます。
国際送金をすると手数料が高価になってしまう
法定通貨が強制通用力を有するのは、自国でのみ。異なる法定通貨を採用する国へ送金をするときには、SWIFTという国際的な銀行のネットワークを使います。
SWIFTでは、「コルレス銀行」という中継役となる銀行に対して1000円以上、ときに6000円以上の高価な手数料が発生してしまうのです。
暗号資産(仮想通貨)のメリット、デメリット
暗号資産(仮想通貨)は法定通貨にない特徴があり、また法定通貨とは異なるメリット・デメリットがあります。
メリット
最初の暗号資産(仮想通貨)であるビットコインは、法定通貨に代わる送金システムとなるべく開発。そのため、法定通貨にはないメリットがあります。
高速送金・低手数料を実現
従来の法定通貨では、国際送金に多額の手数料と何日もの時間を要していました。
しかし暗号資産(仮想通貨)は国際的な通貨なので、送信先のウォレットアドレスさえあれば簡単に送金ができます。暗号資産(仮想通貨)の種類にもよりますが、早ければ数秒から数分で送金が完了。しかも手数料はほとんどかかりません。
これは、暗号資産(仮想通貨)の大きなメリットです。
世界情勢に左右されない
暗号資産(仮想通貨)は発行主体が存在せず、利用者の需要によって価値が決まります。そのため、世界情勢や国の事情に一切左右されません。
治安が悪かったり、中央銀行が信頼できないような国では、法定通貨の価値は著しく下がります。そのような国では、暗号資産(仮想通貨)を保有することで自分の財産を守るのです。
先進国でも、ビットコインを自分の財産の退避先にする人も。そのため近年、ビットコインは同様の用途を持つ金になぞらえて「デジタルゴールド」とも呼ばれています。
セキュリティが強固
法定通貨では常に偽造の問題がついて回ります。紙幣や硬貨は高度な偽造防止技術が使用されていますが、偽造技術も進歩しており、いたちごっこが続いているのが現状。
暗号資産(仮想通貨)はインターネット上にあるため一見セキュリティが脆弱そうですが、暗号資産(仮想通貨)の中核技術である「ブロックチェーン」は一本の鎖のように取引記録がつながるため、偽造することも外部から改ざんすることも非常に困難な仕組みとなっています。
暗号資産(仮想通貨)は、セキュリティが非常に強固なのです。
デメリット
暗号資産(仮想通貨)にもデメリットはあります。
新しいから暗号資産(仮想通貨)が優れている、デメリットがあるから暗号資産(仮想通貨)は劣っているというのではなく、メリット・デメリット両面を把握して、どちらがどの面で優れているか理解しておきましょう。
用途が非常に限定されている
日本国内では暗号資産(仮想通貨)決済を導入している店舗・サービスはわずかしかありません。せっかく国際的な通貨として利用できるのに、肝心の導入店舗が少ないと不便ですよね。
暗号資産(仮想通貨)決済ができるところも少しずつ増えていますが、まだまだ使えるところを探さないといけないというのが現状です。
決済手段として非常に不便
常に価格が変動していることが、決済手段としての暗号資産(仮想通貨)の大きな障害となっています。
暗号資産(仮想通貨)市場は、1日に20%動いたことも。100万円だったものが120万円になったり、80万円になったりするのです。
100万円の買い物をしたくても、価値が80万円になったら購入できなくなってしまいますよね。これは、決済手段として非常に不便な点といえるでしょう。
法整備がまだ不十分
暗号資産(仮想通貨)は2009年に誕生してからまだ10年しかたっていない、まったく新しい概念です。そのため、暗号資産(仮想通貨)に関する法整備がまだまだ整っていません。
過去にマウントゴックスやコインチェックなど、セキュリティ面の不備を突かれて暗号資産(仮想通貨)の不正流出などを起こしてしまうことがありました。
日本では改正資金決済法(仮想通貨法)という法律がありますが、投資家を保護する法的な仕組みが整備されたのは事件後のこと。
このような法整備の不備は、暗号資産(仮想通貨)の普及の妨げとなっています。
暗号資産(仮想通貨)は法定通貨の代用になるのか?
近年、日本でも現金を使わない「キャッシュレス決済」の普及に努めており、QRコード決済などを利用した人に5%ポイントバックを行うなどのキャンペーンを実施しています。
暗号資産(仮想通貨)決済も広義ではキャッシュレスの一部。今後暗号資産(仮想通貨)が法定通貨の代用となるか、取って代わることができるかというのは、大きな関心となるでしょう。
将来的に、暗号資産(仮想通貨)が法定通貨の代用となる可能性はあります。しかし現状では厳しく、まだまだ時間がかかると言わざるを得ません。
なぜ法定通貨の代用が難しいのか
暗号資産(仮想通貨)が法定通貨の代用となるのが難しい理由はいくつかあります。
現状ではすぐに克服するのは困難ですが、そのためのアプローチも行われており、いずれ結果が出るかもしれません。
暗号資産(仮想通貨)は「通貨の三大機能」を満たしていないため
私たちが普段使う法定通貨には「通貨の三大機能」というものがあります。
- 価値の変動しない「価値の保存機能」
- 交換の媒体となる「交換機能(決済機能)」
- 価値を決める物差しとなる「価値の尺度機能」
暗号資産(仮想通貨)は非常に値動きが大きいので「価値の保存機能」や「価値の尺度機能」を満たすことができていません。決済手段として使える店舗が少ないので「交換機能(決済機能)」も不十分。
暗号資産(仮想通貨)は「通貨の三大機能」を満たしていないため、法定通貨の代用が難しくなってしまうのです。
現状の暗号資産(仮想通貨)はまだ法定通貨ありきであるため
現在の暗号資産(仮想通貨)は、法定通貨ありきのシステムとなっています。具体的には暗号資産(仮想通貨)取引所などで暗号資産(仮想通貨)を手に入れるに、法定通貨で購入しなければなりません。
暗号資産(仮想通貨)が法定通貨に取って代わるためには、暗号資産(仮想通貨)で暗号資産(仮想通貨)を買う、暗号資産(仮想通貨)でモノ・サービスを買うなど、暗号資産(仮想通貨)単体で経済活動ができる必要があります。
現在はまだまだ、過渡期と言えるでしょう。
知名度がまだ低いため
日本社会では、暗号資産(仮想通貨)の周知徹底がまだまだ十分ではありません。
名前は聞いたことがあっても実態は理解できない、悪いニュースばかり聞いていてよくない印象があるなど、知名度はまだまだ低いと言えるでしょう。
将来暗号資産(仮想通貨)が法定通貨の代用となるには、法定通貨を扱うときと同様のリテラシーを学ぶ機会が必要になります。
法定通貨と暗号資産(仮想通貨)の違いまとめ
- 法定通貨と暗号資産(仮想通貨)の違いは「発行者の有無」「発行枚数上限の有無」「価値の保証の有無」「実体の有無」「国境の有無」
- 法定通貨のメリットは「国内ならどこでも使える」「価値が一定」「入手方法が多い」、デメリットは「国の信用や政策で価値が左右される」「国際送金が不便」
- 暗号資産(仮想通貨)のメリットは「国際送金が便利」「世界情勢に左右されない」「セキュリティが強固」、デメリットは「使える場所が多くない」「価値の変動のため決済手段として使いにくい」「法整備が不十分」
- 暗号資産(仮想通貨)は「通貨の三大機能を満たしていない」「購入が法定通貨ありきな仕組み」「知名度が低い」ことから、法定通貨の代用となるのはまだ難しい
今回は同じ「通貨」の名前を持つ法定通貨と暗号資産(仮想通貨)の違いと、それぞれのメリット・デメリット、暗号資産(仮想通貨)が法定通貨の代用となる可能性について検証しました。
法定通貨と暗号資産(仮想通貨)はまったく異なる特徴があり、メリット・デメリットも異なります。現状ではまだまだ暗号資産(仮想通貨)が法定通貨の代用となるのは難しいですが、暗号資産(仮想通貨)のデメリットを補う機能が開発されるなど日々進歩しているのです。
将来的には暗号資産(仮想通貨)が現在のデメリットや課題を克服し、法定通貨に取って代わる未来が訪れるかもしれません。ただ、それは当面先の話となるでしょう。
仮想通貨の仕組み