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米株式市場オリンピックでは小型株が快走

ストーリーハイライト

米国の小型株のパフォーマンスは、歴史的には大型株を上回ってきましたが、この10年間は大型株を大きく下回っています。長期的な平均回帰の原則がうまく機能すれば、当面は小型株が人気セクターとなる可能性があります。

米小型株のベンチマークであるラッセル2000指数の最近の好調なパフォーマンスは、目を見張るほどです。もし米主要市場指数がオリンピックの競技者であったとしたら、無敵と思われた大型株が疲弊しつつあるのを尻目に、小型株が全速力で差を縮めていることに注目が集まるでしょう。

小型株セクターの投資家にとっては、ここから少しでも堅調なパフォーマンスが続けば、それはすべて勝利となります。

インデックス競争

ラッセル2000指数にとって驚くべき展開であり、大型株を上回る連勝を続けています。7月だけでラッセル2000指数は9%以上も急騰し、S&P500指数を圧倒しています。この目覚ましいパフォーマンスの背景には、インフレの緩和とそれに伴う金利見通しの改善があります。これらは、小型株への投資家の信頼を高めた要因のひとつとなっています。

大型株や超大型株が注目を集めてきましたが、無視されてきた小型株には多くの価値があるようです。米国株全般をカバーする米投資顧問会社ティートン・ウエストウッドのポートフォリオ・マネジャー、ニコラス・ガルッチオ氏は、「小型株の急騰は、合理的な投資家がようやく市場に戻ってきたことを物語っているだろう」と指摘しています。

過去の実績と今後の見通し

小型株は大型株をアウトパフォームしてきた歴史があり、それは「ファーマ・フレンチの3ファクター・モデル(株式リターンを説明するモデルで、過去のデータは大型株に対する小型株のリターンの優位性を示唆)」で実証されています。しかし、過去10年間は「マグニフィセント・セブン」と呼ばれるテック銘柄が脚光を浴び、小型株にとって厳しい時期が続きました。

米独立系資産運用会社、アメリカン・センチュリー・インベストメンツのマイク・ロード氏は、「小型株にとっては厳しい状況が続いていました。『マグニフィセント・セブン』が部屋の空気を全部吸い取ってしまったようなものです」と述べています。にもかかわらず、ロード氏とガルッチオ氏は、今後12~24カ月間は小型株の循環的なアウトパフォームが続くと予想し、特にガルッチオ氏はこの傾向が最長で3年続くとさえ予測しています。

TipRanks ETF比較ツールを使うと、上記のように、iシェアーズ・ラッセル2000 ETF(IWM)の3カ月のパフォーマンスが、SPDR S&P 500 ETF(SPY)とナスダック100指数(ここではインベスコ QQQトラスト、QQQ)の両方を凌駕し、各インデックスETFに対して5%以上も上昇していることが分かります。年初来で見た場合には、ラッセル2000指数のパフォーマンスはS&P500指数やナスダック100指数を下回っていますが、いくつかの要因が有利に働いています。

オンショアリングが小型株の勢いを加速

地政学的緊張が高まる中、サプライチェーンのオンショアリング(国内回帰)が小型株の上昇に寄与しています。この関連では、建設や地方銀行など米国内プロジェクトに携わる個別企業がこの恩恵にあずかると見込まれています。例えば、日本のパナソニック・グループは、カンザス州デソトに電気自動車用バッテリー工場を建設中で、こうしたプロジェクトの建設や融資に携わる小型株企業の株価が上昇すると予想されています。

また、オンショアリングの恩恵を受ける例としては、建設資材のサミット・マテリアルズ(Summit Materials, SUM)が挙げられ、LSEG(ロンドン証券取引所グループ)によるアナリスト調査で同社株は「買い」と評価されています。同様に、半導体関連機器企業のコヒュー(Cohu,  COHU)は、株価が年初来で10%下落しているにもかかわらず、その強固なバランスシートと収益ポテンシャルから有望な投資先と見られています。

小型株の優位性、勝利の戦略か?

ラッセル2000指数が大型株をアウトパフォームし続ける中、投資家は小型株が株式市場オリンピックの新チャンピオンではないかと考えているかもしれません。「過去の実績は将来のリターンを示唆するものではない」というフレーズをよく耳にします。長期的な記録を見た場合、小型株のパフォーマンスは大型株に対して2%有利でしたが、新型コロナウイルスパンデミック以降、これが崩れています。

過去3年間では、QQQとSPYのリターンは5倍以上となっています。最近の小型株のパフォーマンスは、小型株にとって良好な経済・地政学的要因と相まって、小型株の優位性を示唆しています。

レースは続く

ラッセル2000指数が最近、米株式市場の表彰台のトップに躍り出たことは、成長企業、特に小型株の回復力と可能性を示すものです。市場が変化する中、小型株がリードを維持し、長期的な勝利を確保できるかどうか、興味深いところです。

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ディスクロージャー

本記事は株式投資分析ツールTipRanksの許可を得て、In the Stock Market Olympics, Small-Caps Are in Full Sprint原文の翻訳を中心にまとめています。

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この記事のライター
金融コンテンツ・エディター兼翻訳者。 米国株など米国金融市場を中心に金融関連コンテンツの翻訳・作成にこれまで従事。 日本経済新聞社英文編集部門勤務を経て、約20年にわたり外資系金融機関などで金融関連コンテンツの翻訳・編集業務およびマーケティングサポートを担当。 米国の個人投資家向け金融メディア「モトリーフール」の日本語サイト(今は撤退)で、翻訳・編集業務を担当した経験もあり。 日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)
米国株投資の銘柄分析はTipRanks
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