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人気エネルギーETF比較、優れているのどちらか?

ストーリーハイライト

原油価格は急騰し、エネルギー株と関連ETF(上場投資信託)を押し上げています。人気があるフィデリティMSCIエネルギー・インデックスETF(NYSEARCA:FENY)とiシェアーズ米国エネルギーETF(NYSEARCA:IYE)は、投資家にとってどちらがより優れたエネルギーETFなのでしょうか?

エネルギーセクターの好調を背景に、資産運用大手2社のエネルギーETFを比較する良い機会です。どちらも優れたETFであり、共通点も多いのですが、後述するように、明らかな勝者が存在します。

下のグラフは、TipRanksの比較ツールによるFENYとIYEのリターンの比較です。

エネルギーETFに投資する上で魅力的な時期

原油価格は2024年に上昇し、エネルギー株と関連ETFを最高値に押し上げました。FENYは年初来で13%上昇し、IYEは12.4%上昇しています。

エネルギー株が好調な理由はさまざまです。OPECプラス諸国による減産は、需要が増加している第2四半期まで継続されそうです。さらに、中国の経済活動が回復しつつあること、欧州諸国が石油備蓄の補充に取り組んでいること、米国では夏の旅行で賑わうことが予想され、ガソリン需要が増加していることなども要因です。その一方で、中東や東欧における地政学的な緊張も価格を押し上げています。

市場全体と比較するとエネルギー株は依然としてはるかに割安

長期的には、エネルギー株は引き続き魅力的と考えられます。ひとつには、エネルギー株は好パフォーマンスをあげているものの、市場のリーダー的銘柄が急伸し投資家がバリュエーションに懸念を強めている現在、市場全体と比べるとエネルギー株はまだはるかに割安であることが挙げられます。

S&P500指数(SPX)のPER(株価収益率)が23.2倍であるのに対し、FENYとIYEの上位2銘柄であるエクソン・モービル(NYSE:XOM)とシェブロン(NYSE:CVX)は、それぞれPER13.1倍と12.2倍と、比較的割安なバリュエーションで取引されています。他の多くのエネルギー株はさらに割安なバリュエーションを特徴としています。

FENYとIYE ETFの戦略は?

これら2つのETFは、米国のエネルギー株に投資する資産運用大手のETFであり、運用資産残高も似ています。

FENYはフィデリティの運用資産残高19億ドルのETFで、「資産の少なくとも80%をMSCI USA IMI Energy 25/50 Indexに含まれる証券に投資する」ものです。これは、中小型株、中型株、大型株のエネルギー株に投資する修正時価総額加重指数です。

一方、IYEは運用資産残高約14億ドルで、「エネルギーセクターの米国株式で構成されるインデックスの投資成果に連動することを目指す」もので、投資家に「石油・ガスを生産・販売する米国企業へのエクスポージャー」を提供します。その原指数は Russell 1000 Energy RIC 22.5/45 Capped Gross Indexです。

ポートフォリオの比較

両ETFとも米国のエネルギー株に投資しているため、ポートフォリオには重複する部分が多くあります。しかし、FENYはIYEよりも分散されています。

FENYは116銘柄を保有しており、上位10銘柄でETFの65.9%を占めています。以下は、TipRanksの保有銘柄ツールを使用したFENYの上位10銘柄の概要です。

一方、IYEは41のポジションを保有しており、保有ポジション数ははるかに少なく、上位10銘柄でETFの71.2%を占めており、やや集中しています。

以下は、TipRanksの保有銘柄ツールを使ったIYEの上位10位までの概要です。

2つのETFのトップ10保有銘柄リストは似ており、(ウェイトが異なるものの)トップ10保有銘柄のうち9銘柄が同じです。

注目すべきは、エクソンモービルが両ETFの上位保有銘柄であり、FENYでは22.8%、IYEでは22.95%と大きなウェイトを占めていることです。

両ETFの上位保有銘柄グループは、TipRanksのスマートスコア・システムで高く評価されています。スマートスコアは、TipRanksが独自に開発した定量的株式スコアリング・システムです。8つの主要な市場要因に基づき、銘柄を1から10までのスコアで評価します。8点以上がアウトパフォームと評価されます。各ETFの上位10銘柄のうち、7銘柄がアウトパフォーム相当のスマートスコア8以上を獲得しています。

なお、両ETFのETFスマートスコアは10点中8点(アウトパフォーム相当)です。

配当の概要

エネルギー株は、魅力的な配当利回りと安定した配当により、インカム投資家に重視されることが多いため、両ETFが配当ETFであることは驚くことではありません。IYEの配当利回りは2.5%で、FENYは2.8%とやや高めです。

IYEの配当支払いには申し分ない実績があります。IYEは2000年の設定以来、23年連続で配当を行っています。FENYは後発のため、IYEのような目覚ましい配当実績を築く時間はありませんが、2013年の設立以来毎年、10年連続で配当を支払っています。

経費率の違い

エネルギーに特化した2つのETFは多くの点で類似していますが、大きく異なる点は手数料です。

IYEの経費率は0.40%で、1万ドルをETFに配分する投資家は、1年間で40ドルの手数料を支払うことになります。これは決して法外なものではありませんが、FENYの0.08%よりかなり高いです。FENYの手数料の低さは、FENYの投資家が1年間で支払う手数料がわずか8ドルであることを意味します。

これらの手数料の差は、その差が複利になるにつれて、時間の経過とともに明らかになります。例えば、各ETFが現在の経費率を維持し、年率5%のリターンを上げると仮定します。10年後、IYEに1万ドルを投資した投資家は505ドルの手数料を支払うことになりますが、FENYに投資した投資家が支払う手数料はわずか108ドルです。

結局、IYEの経費率はFENYより5倍高く、FENYが明らかにお買い得となります。

アナリストによると、IYEは「買い」か?

ウォール街に目を向けると、TipRanksによれば、IYEのアナリスト・コンセンサス評価は「中程度の買い」です。これは、ポートフォリオで保有する各銘柄の過去3カ月間のコンセンサス評価に基づいています。32件の「買い」、10件の「中立」に基づきます。IYEの平均目標価格の55.46ドルは、今後12カ月で13.3%の上値余地を示唆しています。

アナリストによると、FENYは「買い」か?

TipRanksによれば、FENY のコンセンサス評価も「中程度の買い」です。これは、保有銘柄の過去3カ月間のコンセンサス評価である、「買い」92件、「中立」22件、「売り」3件に基づいています。FENYの平均目標価格の29.24ドルは、今後12カ月で14%の上値余地を示唆しています。

明確な勝者

2つのETFは保有銘柄が重複しており、配当利回りもほぼ同じです。また、アナリストは2つのETFの上値余地を同程度と予想しています。しかし、2つのETFには多くの類似点がある一方で、IYEは経費率でFENYより5倍高く、FENYが明確な勝者となっています。FENYはさらに分散投資と若干高い配当利回りを提供しています。

免責事項

ディスクロージャー

本記事は株式投資分析ツールTipRanksの許可を得て、FENY vs. IYE: Which Is the Better Energy ETF?原文の翻訳を中心にまとめています。

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この記事のライター
TipRanksの専属編集者兼翻訳者。 米国株など米国金融市場を中心に金融関連コンテンツの翻訳・作成にこれまで従事。 日本経済新聞社英文編集部門勤務を経て、約20年にわたり外資系金融機関などで金融関連コンテンツの翻訳・編集業務およびマーケティングサポートを担当。 米国の個人投資家向け金融メディア「モトリーフール」の日本語サイト(今は撤退)で、翻訳・編集業務を担当した経験もあり。 日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)
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