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キャシー・ウッド氏の次世代インターネットETF:94%の上昇後、ブレーキを踏む時か

ストーリーハイライト

アーク・インベストメント・マネジメントの創設者兼CIOのキャシー・ウッド氏が運用する「アーク次世代インターネットETF(NYSEARCA:ARKW)」は、2023年に年初来で94.4%の上昇を記録し、大成功を収めています。2022年にはいくつかのアーク・ファンドが苦境に立たされ、投資家は疑心暗鬼に陥っていましたが、ウッド氏は大きく盛り返しています。

しかし、大幅な上昇の後、投資家はETFのパフォーマンスを追わずにブレーキを踏むのが賢明とみられます。2023年はARKWの保有者にとって報われた年でしたが、このファンドは分散投資に欠け、長期的な実績も乏しく、経費率も高いです。

アーク次世代インターネットETFの戦略は?

ARKWは、次世代インターネットをテーマに投資するアクティブ運用ETFです。

ARKは、次世代インターネット企業を、「テクノロジーインフラの基盤をクラウドにシフトし、モバイル、新しいローカルサービスを可能にすることに焦点を当て、そこから恩恵を受けることが期待される企業」と定義しています。それらの企業の分野は、共有テクノロジー、インフラ、サービス、インターネットベースの製品やサービス、新しい決済方法、ビッグデータ、モノのインターネット(IoT)、ソーシャル配信やメディアが含まれます。

テクノロジー株、仮想通貨、AI(人工知能)は、2023年の市場の大きな勝者であり、ARKWの素晴らしいパフォーマンスを牽引しています。

ARKWのポートフォリオは?

ARKWは35銘柄を保有しており、上位10銘柄でファンドの63%を占めています。これはあまり分散されたETFではなく、上位数銘柄にかなり集中しています。

以下は、TipRanksの保有銘柄ツールを使用したARKWの上位10銘柄の概要です。

ご覧の通り、仮想通貨取引所の運営企業コインベース・グローバル (NASDAQ:COIN) はARKWの最大のポジションで、11.8%のウェイトを占めています。

コインベースは年初来で357%という驚異的な上昇を記録し、その過程でARKWを押し上げました。

しかし、過去に見てきたように、コインベースは非常に不安定であり、ビットコイン(BTC-USD)や他の仮想通貨の価格が下がると、コインベースの株式はしばしば急落します。そのため、2023年にコインベースの大きなポジションがARKWに恩恵をもたらしたように、今後ARKWの足を引っ張る可能性があります。

TipRanksによれば、コインベースの平均目標株価は95.78ドルで、今後12カ月で37.7%の下値余地を示唆しており、投資家はこの点に注意する必要があります。

コインベースの大きなポジションに加えて、ARKWはグレイスケール・ビットコイン・トラスト (OTC:GBTC)の大きなポジションも持っています。このように、ARKWはこれら2つの集中ポジションを通じて、暗号市場の潜在的なボラティリティに多くのエクスポージャーを与えています。

さらに、ARKWの上位保有銘柄は、スマートスコアによってあまり高く評価されていません。スマートスコアは、TipRanksが独自に開発した定量的株式スコアリング・システムです。8つの市場主要要因に基づき、銘柄に1から10までのスコアを与えます。8点以上はアウトパフォームと評価されます。

ARKWの上位10銘柄のうち、スマートスコアが8以上(アウトパフォーム相当)なのは、ブロック (NYSE:SQ)とロブロックス (NYSE:RBLX)の2銘柄のみです。

ARKWのETFスマートスコアは、10点満点中7点(「中立」相当)です。

長期的には不十分なパフォーマンス

ARKWは、今年は好調なパフォーマンスを見せていますが、常にそうだったわけではありません。

同ファンドは2022年に大苦戦し、年間67.5%の損失を計上しました。その前年の2021年もファンドにとっては困難な年であり、16.7%の損失でした。

ARKWが2023年に立ち直ったことは評価しますが、長期的に一貫した勝者ではありません。実際、11月30日現在、当ファンドは過去3年間で年率20.1%の損失を出しています。なお、過去5年間では、年率換算で7.8%というリターンを上げています。

このパフォーマンスに基づくと、ARKWは、インベスコQQQトラスト (NASDAQ:QQQ)やテクノロジー・セレクト・セクターSPDR ETF (NYSEARCA:XLK)のような他の人気テクノロジー特化型ETFに大きく遅れをとっています。

11月30日現在、QQQの過去3年間のリターンは年率換算で9.7%、過去5年間のリターンは18.9%で、いずれもARKWのリターンを大きく上回っています。同様に、XLKの過去3年間の年率換算リターンは15.4%、過去5年間のリターンは18.9%となっています。

かなり高い経費率

ここで、ARKWに関する最後の懸念である経費率に行き着きます。ARKWはこれらの人気テクノロジーETFをアンダーパフォームしている一方で、両ETFよりもはるかに割高です。ARKWの経費率は0.87%と非常に高いです。一方、QQQは0.20%、XLKはさらに低い0.10%です。

つまり、10,000ドルの投資に対して、ARKWは年間87ドルの手数料がかかるのに対し、QQQは20ドル、XLKはわずか10ドルです。

ARKWはアクティブ運用であるため、これらのインデックス・ファンドよりも本質的に割高ですが、インデックス・ファンドを大きく下回っているため、高い手数料を正当化できるような実績は生成されていません。

以下は、TipRanksのETF比較ツールで作成した、ARKW、QQQ、XLKの比較です。

アナリストによると、ARKW は「買い」ですか?

過去3カ月間のアナリストレーティングは、「買い」が26人、「中立」が10人で、コンセンサス評価は「中程度の買い」です。平均目標株価の72.99ドルは、今後12カ月で2.7%の下値余地を示唆しています。

結論:ブレーキを踏む時か

2023年はARKWにとって素晴らしい年であり、2021年と2022年の試練の後、保有者は喜ぶことができるでしょう。しかし、ここからファンドを追いかけることはせず、分散投資の欠如、いくつかのボラティリティの高い銘柄への集中、不十分な長期的パフォーマンス実績、かなり高い経費率に注目すべきです。

テクノロジー、AI、インターネットなどのテーマに関心のある投資家は、QQQやXLKのような人気のあるテックETFを検討することもできます。これらのETFは経費率が低く、長期的なパフォーマンス実績が優れています。

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ディスクロージャー

本記事は株式投資分析ツールTipRanksの許可を得て、ARKW ETF: Time to Pump the Brakes after 94% Gain原文の翻訳を中心にまとめています。

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この記事のライター
金融コンテンツ・エディター兼翻訳者。 米国株など米国金融市場を中心に金融関連コンテンツの翻訳・作成にこれまで従事。 日本経済新聞社英文編集部門勤務を経て、約20年にわたり外資系金融機関などで金融関連コンテンツの翻訳・編集業務およびマーケティングサポートを担当。 米国の個人投資家向け金融メディア「モトリーフール」の日本語サイト(今は撤退)で、翻訳・編集業務を担当した経験もあり。 日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)
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