✔ 豪ドル投資を始めようとしている方
✔ 豪ドル投資のメリット・デメリットを確認したい方
かつては高金利通貨としてFXでは人気のあった豪ドルですが、現在は低金利が続いています。豪ドルは再び利上げしていくのでしょうか。
結論から言えば当面は豪ドルは利下げ局面が続くとみられています。
しかし、オーストラリア国内や世界を取り巻く状況の中、豪ドルの底堅さを感じられる面もあり、現在が割安であるともいえます。
豪ドルの今後について解説していきます。
- 現在は豪ドル投資の投資タイミングとしては割安な状態である
- 2019年の豪ドルの価格を左右するのは米中貿易摩擦と豪ドルの金利動向
- 2019年6月4日RBAは2年10ヵ月ぶりの利下げ、労働市場・インフレ率が改善しない場合は追加利下げが行われる可能性がある
- 2019-2020年度予算案が12年ぶりの財政黒字
目次
豪ドルには今後投資すべき?
豪ドルは正式には「オーストラリア・ドル」でオーストラリア連邦で用いられている通貨です。通貨コードはAUDで、FX投資家の間では「オージー」と呼ばれることもあります。
オーストラリアの貨幣はかつては英国通貨のポンドが使用されていましたが、1966年からオーストラリア・ドルに置き換えられるようになりました。
しかし現在でもオーストラリアの元首は英国のエリザベス2世女王ですので、硬貨の表面にはエリザベス2世の肖像画がデザインされています。裏面にはオーストラリア特有の動物がデザインされています。
オーストラリア紙幣といえば2019年5月に最先端の技術を使用して作った新紙幣の50ドル札に誤植があり、誤植された紙幣を既に4億枚も印刷してしまったというミスでも話題となりました。
豪ドル投資のメリット
豪ドルは近年は低金利の状態が続き、価格も下落しています。
しかし、景気の底堅さもあり、資源価格が上昇していることや米国の利下げ基調が始まっていることにより、現在は投資タイミングとしては割安な状態であると言えます。
リスクに注意して運用していけば為替差益による利益を得られる可能性があるほか、豪州のインフレ率が上昇していけば金利上昇にもつながり、再びスワップ金利による利益を得ることも可能となります。
豪ドル投資のデメリット
豪ドルは以前は高金利通貨として人気がありましたが、最近では米国よりも低金利となっており、スワップ目的の投資の魅力は薄れています。
- ボラティリティが高く
- ショック相場にも弱い
ことから、日本国内のスワップ投資家の間でも急落により強制決済に遭うなど、旨みはないのにリスクは高いままという状態になっています。
豪ドル円のこれまでのチャートと今後の動向
ここからは豪ドル/円のここ3年の値動きを見ていきたいと思います。
2016 6月24日英国EU離脱国民投票で急落
豪ドルはリスクオフ局面に弱く、他国を発端とする金融ショックでも大幅下落をしてしまう傾向があります。
2016年6月24日に英国のEU離脱に関する国民投票が行われました。
当初、残留の結果が出るとの市場の予想に反して国民投票の結果が離脱という事が明らかになるとリスク回避の円買いが加速、豪ドルは急落しました。
この日の豪ドルの高値は81円62銭、安値は72円53銭と9円も下落しました。
2017 商品市況の影響を受けて上下
2017年は商品価格に連動した動きを見せました。
上半期は軟調に推移しましたが、6月から7月にかけて豪州の主要な輸出品目である鉄鉱石の価格が反発して豪ドルは上昇しました。鉄鉱石価格の上昇は堅調な中国経済が要因となっており、中国経済に資源価格が押し上げられ、豪ドル高につながりました。
その後一旦下降トレンドに入るも、11月以降は資源価格の持ち直しより、豪ドルは対円で上昇しました。
2018 米中貿易摩擦と米国の金利上昇により軟調地合い
2018年から豪ドルは下降トレンドに入ります。
米中貿易摩擦と米ドルの金利上昇により豪ドルとの金利差が拡大したことで軟調に推移しました。
豪ドルといえば資源価格との連動性が特徴ですが、資源価格が上昇傾向にあるのに豪ドル安になるなど、2018年は資源価格と乖離して動く傾向が目立ちました。
これは米国との金利差による要因と投資家心理の悪化による豪ドル売りが強く出たものと見られています。
2019年の豪ドルは米中摩擦と金利の動向に注意
2019年の豪ドルの価格を左右するのは米中貿易摩擦と豪ドルの金利動向です。
米中貿易摩擦が長期化していることで中国経済の先行きが不安になると豪ドル安へとつながる要因となります。
今後米国のトランプ大統領の発言によっては一時急落の恐れもあるので注意が必要です。
さらに、6/4にRBAが利下げを決定したことで、今後追加利下げを行うのかに焦点が置かれています。
豪州の金利政策の現在と今後
オーストラリアではオーストラリア準備銀行(RBA)が金融政策の決定と遂行の責任を負っています。
RBAは1993年以降、金融政策にインフレターゲット制を採用しています。
RBAの掲げるインフレ目標は2~3%です。これを超えるとインフレ抑制のために利下げ、逆に低い場合は利下げを行い金融緩和を行います。
ちなみに豪州の現在のインフレ率は1.3%。
RBAの目標とするインフレ率を下回っている状態です。
2019年6月4日RBAは2年10ヵ月ぶりの利下げへ
6/4、RBAは政策金利を0.25%引き下げ、これまでの過去最低水準となる1.25%にすると発表しました。
オーストラリアの金利は2016年8月から1.50%を維持してきたため、今回の利下げは2年10ヵ月ぶりとなります。
RBAは5月の金融政策決定会合の議事要旨で
- 労働市場の改善が無ければ利下げが適切との意思を示していたこと
- RBAのロウ総裁が講演で6月の会合では利下げを検討する
ということを示していたことなどから市場では6月に利下げが行われることは織り込み済みでした。
今回の利下げは豪州で長く続く低インフレに対してのテコ入れを意識したものと見られています。豪州は緩やかな成長が続いているにも関わらず、成長の減速が障害になっています。
豪州の最大の貿易相手である中国が現在米国と貿易摩擦で不安定な状態であることから輸出の伸びが低下していたり、豪州国内の住宅価格の下落がインフレ率の上昇を抑え込んでいる状態です。
さらに労働市場へ不安感が見え始めたことが利下げの主な要因です。
インフレ率が上昇すれば金利が上昇
現時点でRBAが金利を上げる可能性は非常に低いです。
ただし、現在RBAが利下げの理由として挙げている労働市場の改善、住宅市場上昇が実現し、インフレ率が上昇すれば利上げに転じる可能性があります。
豪ドルは現在でも金利を魅力として考えている投資家も多く、金利上昇は投資家の買いを誘い、豪ドル高につながります。
いずれにせよ、豪ドルは現在下降トレンドが継続中ですので、今後どこまで価格が下落していくのかに注目です。
段階的な追加利下げが予想されている
6月4日の金融政策決定会合で決定された利下げをしても労働市場、インフレ率が改善しない場合は追加利下げが行われる可能性があります。
市場では追加利下げは織り込み済みとの見方が50%ほどあり、場合によっては段階的期に利下げが行われているとの見方です。
追加利下げは豪ドルの上値を押さえますが、利下げは市場織り込み済みですので、下値は限定的と言えます。
オーストラリアの経済から今後を予想
豪州は経済成長が著しいアジア圏に違い場所に位置する英語圏の国です。
鉄鉱石をはじめとする一次産業が主力で、中国が最大の貿易相手国となります。その豪州の近年の経済についていくつか解説したいと思います。
緩やかな世界最長の景気拡大局面が継続
オーストラリアでは現在景気拡大局面が長期間にわたって続いています。
オーストラリアが最後に景気後退をしたのが1991年のことです。それから27年もの間景気拡大局面にあり、先進国の中でもこのように長い景気拡大局面が続いた国はありません。
オーストラリアが長く景気拡大を続けているのは中国経済の急伸とその中国に原材料を提供してきたのがこのオーストラリアであることが大きな要因です。
しかし、この景気拡大は最近はあまり評価されていません。その緩やかな成長は「勢いがない」と判断されているからです。
- 不動産市況の低迷
- 需要の低下
がインフレ率を低下させています。
成長は明らかに鈍化しており、近々リセッション入りするのではないかとの見方が出ています。
住宅価格低迷が経済・金利上昇への重石
オーストラリアの住宅価格は下落が続いています。
2017年半ばまで、中国マネーの流入や低金利で住宅価格は上昇を続けましたが、中国の資本規制や金融機関の住宅ローン審査の厳格化により暗転。
中国経済の減速も住宅価格に圧力を加えています。
住宅価格の低迷はインフレ率の低下につながり、インフレ率が豪州当局が目標とする2~3%に届いていないことも更なる利下げの要因となります。
鉄鉱石価格が上昇基調に
商品市場では豪州最大の輸出品の鉄鉱石の価格が上昇しています。
鉄鉱石は豪州の輸出額の2割強を占めており、鉄鉱石価格の上昇基調は豪ドルを下支えするとみられています。
鉄鉱石価格の上昇の要因は
- 鉄鉱石世界最大のブラジルのヴァーレの鉱山ダムの決壊により供給が先細るとの懸念
- 世界の粗鋼生産のおよそ半分を占めている中国の粗鋼生産量が増産する姿勢を強めている
ことです。
中国は米中貿易摩擦を受けて景気のテコ入れのために鉄道や道路建設等のインフラ投資に補助金支給などをして景気対策を本格化させています。
景気対策による鉄鉱石の需要が今後顕著化することが予想され、鉄鉱石価格の上昇につながっています。
オーストラリアの現在の財政状態と今後
次にオーストラリアの財政についてです。
次年度予算案が黒字化、労働市場の低迷等、好材料、悪材料が入り混じり、今後の当局の対応に期待が持たれます。
2019-2020年度予算案が12年ぶりの財政黒字
オーストラリアは2019年4月2日、2019年7月~2020年6月の予算案を発表しました。
資源価格の上昇などで税収が増えたことからおよそ12年ぶりに財政黒字を達成することになります。また、この黒字はその後4年間続くとも見込んでいます。
ただ、豪州では住宅価格の下落や中国の景気減速という懸念材料も抱えています。
政府は低中所得者への税還付を実施するなど、支援策に動き出しています。
労働市場の改善が金利政策の鍵
RBAによる利下げの背景は低インフレが続く中、2019年5月に失業率が上昇に転じるなど、これまで底堅く推移してきた労働市場に陰りが見えてきたことです。
現在のRBAの政策判断の鍵は労働市場の改善となっており、市場の注目を浴びています。
4月の失業率は5.2%と当局が現在目途としている4.5%以下にはまだ届かない状態です。
現状では雇用の拡大は広まっている中、労働力人口の拡大ペースが加速しており、急速に失業率が落ち着くことは難しい状況にあります。
資源価格と豪ドル相場の乖離が進んでいる
豪ドルは資源価格と連動することが特徴ですが、2016年以降は資源価格と乖離する動きを見せています。
資源価格の上昇に反して豪ドルが軟調に推移する場面が多くみられ、今後は資源価格に対して豪ドルの割安感が好感を持たれる可能性もあります。
一方、オーストラリアも教育産業の留学生受け入れや観光客による国内消費に伴うサービス輸出額が大きく伸びている状態です。
資源依存型の経済からサービス経済への構造転換が進んでいるという事実もあり、今後資源価格一辺倒の動きからオーストラリアの経済成長を下支えすることも期待されています。
オーストラリアの政治情勢は?
次にオーストラリアの政治について解説します。
オーストラリアは立憲君主制の国で国家元首はイギリスのエリザベス二世女王です。ただし、現状ではオーストラリア連邦総督が王権を代行しています。
オーストラリアの連邦議会は上下員の二院制を採用しており、自由党と国民党からなる保守連合と労働党の2大政党が政権を争う形になっています。
2018年8月の突然の首相交代
2018年8月24日、オーストラリアの与党、自由党は臨時の議員総会でモリソン財務相を新党首に選びました。
自由党内での抗争が引き金となり、数日間のごたごたの末に新首相が決定しましたが、この突然の首相交代劇は国民も驚かされました。
モリソン首相は米国は「友人」、中国を「顧客」と表現しており、「親米抗中」路線はこのまま維持していくと考えられています。
今後、最大の輸出国である中国との関係に注目がされています。
オーストラリア国民からの政治への不信感が強い
今回の首相交代劇でも見られたように、オーストラリア国民からの政治の不信感は強いものがあります。
モリソン首相は2010年以降6人目の首相で、これまでの5人は全員任期を全うすることなく短命の政権に終わっています。
少し前の日本のように首相が頻繁に変わるため、オーストラリアでは政治に対する不信感が強く、政府を信頼していると回答したオーストラリア人は国民のうち35%にとどまっています。
近年は中国への警戒を強め関係が悪化しつつある
豪州の最大の貿易相手は中国ですが、近年は豪中関係が悪化しつつあります。
今まで豪州は防衛上で長年同盟関係を結んでいる米国と最大の輸出相手の中国の間で上手く運営しようと苦心してしました。
しかし、中国共産党が豪州のメディアや政治に干渉しようとしていること、野党議員が中国の利害関係者から献金を受けていたとの報告が政府にあり、その議員が辞職に追い込まれるなどの事態が発生しました。
オーストラリア政府は中国の内政干渉を防ぐためにファーウェイの豪州での5G(第5世代)高速通信の整備計画の参入禁止措置、内政干渉に関する法案を整備するなどの強硬姿勢を見せています。
豪ドルの今後の予想まとめ
- 現在は豪ドル投資の投資タイミングとしては割安な状態である
- 2019年の豪ドルの価格を左右するのは米中貿易摩擦と豪ドルの金利動向
- 2019年6月4日RBAは2年10ヵ月ぶりの利下げ、労働市場・インフレ率が改善しない場合は追加利下げが行われる可能性がある
- 2019-2020年度予算案が12年ぶりの財政黒字
オーストラリアは現在、為替にとって良い材料と悪い材料が両方ある状態です。
豪ドル投資の場合、近年の低金利政策によりスワップ利益が少なくなったことにより、スワップ通貨としての魅力がなくなったうえにショック相場で大きく下落しやすく、投資対象としての魅力は無くなったと評価されることもあります。
しかし、資源価格の上昇や経済構造の転換など、豪ドルは底堅く、割安感があると捉えられている面もあります。
資金管理を気をつけながら、安値を拾うチャンスでもあると言えるでしょう。
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