銀行はすぐ身近にあり、預金や振込など日々使う機会に接しています。しかし、もしこれがビットコインによって代替されたらどうなるのでしょうか。
今回、銀行業とビットコインの特性を比較し今後の動向を予測してみました。
銀行は中央集権的な仕組み
現在多くの人が預金を預ける「銀行」は仕組みとしては「中央集権的」です。中央集権的とは、決定権や権限が限られた管理者の元に一元化された構造を意味します。中央集権のメリットは全体像の把握が容易になり、意思決定と実行のスピードが速まることにあります。
安定性と信頼性
中央集権的な銀行は、政府や金融当局によって規制されているため、安定性と信頼性が高いと言えます。銀行は、顧客の預金を保護し、顧客が必要とするときにいつでも利用できるようにしています。
保険制度
銀行に預金する際、多くの国では預金保険制度があります。これにより、銀行が破綻した場合でも、預金保険制度によって預金者の資産が保護されます。このような制度は、預金者の資産を保護するために非常に重要です。
預金保護が法律で定められている国も多く、その点が特に先進国の金融機関が個人にとって優れている点と言えるでしょう。
幅広いユーザーサービスとチャネル
中央集権的な銀行は、ATMやオンラインバンキングなどの便利なサービスを提供しています。これらのサービスは、顧客が必要とするときにいつでも利用できるため、生活を便利にすることができます。
金利や融資制度
銀行は、預金者に金利を支払ったり、融資を提供したりすることができます。これらのサービスは、個人や企業が資金を調達するために非常に重要です。また、中央集権的な銀行は、顧客の信用スコアや収入などの情報をもとに、貸出の可否を判断することができます。
反面、中央管理ということで、仕組みや運営すべてがその機関に依存してしまいます。そこに参加する全員が公平の立場になりえないというのがデメリットです。
ビットコインは非中央集権的な仕組み
中央集権的な銀行に対して、近年登場した暗号資産(仮想通貨)の筆頭格であるビットコインは「非中央集権的」です。
非中央集権的とは一箇所に権限や決定権が集中せず、分散している参加者が決定者としての役割を果たすシステムです。非中央集権的のメリットは規制がないがゆえの柔軟性にあり、変更やアップデートが行いやすい環境になりやすいです。
セキュリティおよび透明性
ビットコインは、ブロックチェーンと呼ばれる分散型台帳技術を使用しています。この技術により、ビットコインの取引は非常に安全で、不正な取引を行うことがほぼ不可能に近いレベルで保護されます。
また、ビットコインの取引は、公開された分散台帳であるブロックチェーンに記録されます。このため、誰でも取引の詳細を閲覧することができます。透明性が高いことにより、不正取引の抑止につながります。
手数料
ビットコインの取引手数料は、通常銀行の手数料よりも低く、さらには無料の場合もあります。これは、中央集権的な銀行に比べて、ビットコインが手数料を支払う必要のない分散型の通貨であるためです。
国境を越えた送金
ビットコインは、国境を越えた送金に非常に適しています。中央集権的な銀行では、異なる国の銀行間での送金には手数料や為替レートの問題がありますが、ビットコインは国境を越えた送金に対して高い効率性を持っています。
銀行とビットコインの関わり方
中央集権的な銀行は暗号資産(仮想通貨)に関心を抱きつつも、非中央集権的特徴を持つ「ビットコイン」についてはその性質の違いやリスクコントロールの観点から一定の距離を置いているようです。
そして、現在の銀行としては既存のサービスの代替物となりうるビットコインの存在は素直に受け入れられるものではないでしょう。
独自通貨の開発へ
日本の大手都市銀行(MUFG、SMBC、みずほ)はビットコインと協業するのではなく、独自の暗号資産(仮想通貨)の開発に投資を行っています。
日本の各銀行が一体どのような暗号資産(仮想通貨)を開発しているのか、以下にまとめてみました。
三菱UFJ銀行のMUFGコイン
銀行が取り扱う世界初のオリジナル暗号資産(仮想通貨)が、三菱東京ファイナンシャルグループ(MUFG)が取り扱う「MUFGコイン」です。
MUFGコインが他の暗号資産(仮想通貨)に対して持つ優位性の一つが「1コイン=1円」で換金できることにあります。固定されたレートで換金できるため、他の暗号資産(仮想通貨)に比べても安心感があります。
2018年度中にはリリースされる予定です。
三井住友銀行の動向は注目
三井住友銀行(SMBC)は大手都市銀行の中で唯一独自の暗号資産(仮想通貨)について発表していません。ただ、同行は新卒採用の人数を絞っており、銀行業務のスリム化に取り組んでいることには間違いありません。
かならずしも、暗号資産(仮想通貨)には限りませんが、新しいテクノロジーや通貨の導入でコストカットによる高収益率化を目指しています。
みずほ銀行のJコイン
みずほ銀行は複数の銀行と協業して「Jコイン」という名の暗号資産(仮想通貨)の開発を行っていると発表しています。
同プロジェクトには「ゆうちょ銀行」をはじめ「横浜銀行」「福岡銀行」などの地銀70行が参加しており、規模としてはとても巨大です。
JコインもMUFGコイン同様相場が固定されているため、通常の円の代わりとして使うことができるようです。東京オリンピックが開催される2020年までにはリリースされる予定のようです。
銀行業務とビットコインの比較
ビットコインが銀行業務に取って代わられるように言われますが、実際にそれは可能なのでしょうか。銀行で行われる業務とビットコインの特性を以下で比較してみました。
送金業務
銀行業務の大半を占めるのが「送金業務」だといいます。
そして、ビットコインはこの送金業務に取って代われるほどの送金能力を有しています。
送金手数料が既存の仕組みよりも非常に安価に抑えられることは利用者にとっては非常に大きなメリットです。特に海外送金におけるビットコインの革新性はとても大きいのではないでしょうか。
銀行にとっては収益機会を失うことにもなりかねないため、送金業務での暗号資産(仮想通貨)導入については慎重に検討を進めています。
為替業務
為替業務とは現金を移動させることなく口座間の資金移動を行う業務です。両替や外貨への交換などがわかりやすい事例です。
大きく「内国為替業務」「外国為替業務」に分かれており、前者は振込、送金、口座振替、代金取立、両替、後者は外貨両替、外国送金、輸出入関連サービスなどがあります。
ビットコインは暗号資産(仮想通貨)なので両替の必要もなく、海外との間でも統一された規格になるので外貨両替の必要もありません。
預金業務
預金業務とは顧客の現金を銀行が預かり、その利息を支払う業務です。
顧客が預金を行う主な理由は「盗難の心配」「利息」の2点にありますが、現在の銀行に預け入れをしても利息はほとんどつきません。
ビットコインもハッキングなど盗難の心配はありますが、ウォレットに保管をしておけば大丈夫です。利息はありませんがビットコインにはキャピタルゲインの可能性もあります。
今後銀行は暗号資産(仮想通貨)とどう連携をしていくのか
今後、銀行は暗号資産(仮想通貨)と関わり合っていくのでしょうか。
国が暗号資産(仮想通貨)の規制を行うことで、ビットコインが金融商品として取り扱いを始めると具体的な銀行での取扱や連携が生まれてくるでしょう。
銀行が独自の暗号資産(仮想通貨)を発表しても、内輪で利用するだけの仕組みであれば「ガラパゴス化」して携帯電話のような末路を迎えてしまう可能性もあります。
これから銀行がどう動くかに注目したいところです。
仮想通貨の今後