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AI関連などの電力需要急増で公益株ETFが覚醒

ストーリーハイライト

公益株はここ数カ月、静かなスターパフォーマーとなっています。その公益事業セクターをカバーする「公益事業セレクト・セクターSPDRファンドETF」(Utilities Select Sector SPDR Fund ETF, NYSEARCA:XLU)は、コスト効率に優れた米国籍のETF(上場投資信託)であるとともに、堅実な配当も提供しています。さらに、このETFは電力需要の増加により、さらに上昇する可能性があります。

公益株は株式市場で眠れるセクターと思われがちですが、XLUはこのところS&P 500指数 (SPX)をアウトパフォームしており、年初来で12.5%の上昇を記録しています。

XLUが保有する公益株のバリュエーションが比較的控えめであること、長期的な電力使用量の増加という潜在的なエースを秘めていること、魅力的な配当、そして良好な経費率に基づき、XLU ETFは魅力的と考えられます。

XLU ETFの戦略とは?

1998年に設定されたXLUは、運用資産残高が133億ドルに達し、現在の市場で最大の公益株ETFとなっています。

ETFスポンサーのステート・ストリートによると、XLUは、S&P500指数の公益事業セクターを効果的にカバーするユーティリティ・セレクト・セクター・インデックスに連動する投資成果を目指します。

公益事業セクターは、地味な市場セグメントと思われがちです。公益株は、保守的な投資家やインカム(配当収入)投資家に珍重され、ディフェンシブ性と堅調な配当利回りが評価されています。

電力需要の大幅増予想でXLU浮上

AI(人工知能)の台頭、データセンターの増加、EV(電気自動車)やEV充電スタンドのような新技術の拡大により電力需要が増加しています。

仮想通貨の普及(ビットコイン(BTC-USD)の新しいブロック生成では電力を大量に消費します)も、電力使用量の増加に一役買っています。製造業のオンショアリング(自国回帰)など傾向も、電力需要の増加につながる可能性があります。

国際エネルギー機関(IEA)は、AI、データセンター、暗号産業による電力需要は、早ければ2026年までに倍増すると予測しています。バンク・オブ・アメリカ証券によると、こうした傾向により、電力インフレ率は過去3年間で年率8%と、すでに40年ぶりの高水準にあるとのことです。

XLUの保有銘柄

XLUの特筆すべき点は、特に分散投資されていないことです。32銘柄を保有し、上位10銘柄でETFの59.0%を占めています。筆頭保有銘柄のネクステラ・エナジー (NYSE:NEE)がETFの14.0%というかなり大きな割合を占めていることも注目に値します。

以下は、TipRanksの保有銘柄ツールのXLUの上位10銘柄の概要です。

ネクステラに加え、サザン・カンパニー(NYSE:SO)、デューク・エナジー(NYSE:DUK)、コンステレーション・エナジー(NASDAQ:CEG)、センプラ・エナジー(NYSE:SRE)、アメリカン・エレクトリック・パワー(NYSE:AEP)、ドミニオン・エナジー(NYSE:D)のような他の大型公益株も保有しています。

保有銘柄の多くが良好なスマートスコアを備える

XLUのポートフォリオの魅力は、これらの銘柄の多くが良好なスマートスコアを備えていることです。スマートスコアは、TipRanksが独自に開発した定量的な株式スコアリング・システムで、8つの市場主要要因に基づいて銘柄を1から10までのスコアで評価します。

XLUの上位10銘柄のうち6銘柄が「アウトパフォーム」相当のスマートスコア8以上を獲得しており、センプラ・エナジー、アメリカン・エレクトリック・パワー、ドミニオン・エナジーはいずれもスマートスコア「パーフェクト10」を誇っています。

さらに、XLU自体のETFスマートスコアはアウトパフォーム相当の8です。

XLUのポートフォリオが魅力的なのは、平均株価収益率(PER)が17.8倍であることです。これは、ディープバリュー投資家が飛びつくほど割安ではありませんが、それでもS&P500指数のPER23.2倍に対して大きく割安になっています。

安定的な配当支払い

公益株はそのディフェンシブな性質と配当で知られています。配当利回りは3.1%で、驚くほどではありませんが、S&P 500指数の配当利回り(1.5%)の2倍であることを忘れてはなりません。

さらに、XLUには配当支払者としての長く誇り高い歴史があります。この信頼できるETFは、24年連続で配当を出しており、13年連続で増配を行っています。

XLUの手数料は?

XLUを所有するもう一つの利点は、他のセクターのSPDR ETFと同様に、わずか0.09%という非常に有利な経費率を特徴としていることです。つまり、1万ドルをこのETFに投資した場合、年間に支払う手数料はわずか9ドルとなり、非常に費用対効果の高い選択肢となります。10年間で、ETFが年率5%の利益を上げると仮定した場合、この投資家が支払う手数料はわずか115ドルになります。

さらに考慮すべき点として、他のセクターのSPDR ETFと同様、XLUは過去3カ月間の1日平均出来高が1,490万と、公益事業に特化した小型ETFとは異なり、投資家に十分な流動性を提供しています。

アナリストによれば、XLUは「買い」か?

TipRanksによれば、XLUのコンセンサス評価は「中程度の買い」です。これは、ポートフォリオで保有する各銘柄の過去3カ月間のコンセンサス評価に基づいており、「買い」27件、「中立」6件、「売り」0件です。XLUの平均目標価格の71.75ドルは、わずか0.4%の上値余地を示唆しています。

XLUのリスク

他の投資と同様、XLUにもリスクがないわけではありません。公益事業セクターは規制の厳しい業界として知られており、値上げや利益の増加に困難をもたらす可能性があります。

加えて、いくつかの公益株は近年、サービス提供地域での自然災害や異常気象の被害を受けています。こうした災害への対応に不手際があったとされれば、負債につながる可能性もあります。

しかし、これらは低確率のリスクとみられ、どちらかといえば、XLUを通じて公益事業セクターに投資するバスケット・アプローチの有用性を示しています。

結論:上値余地を秘めたディフェンシブ配当プレー

保有銘柄の適度なバリュエーション、良好な配当利回りと長い配当実績、そして費用対効果の高さから、XLUは魅力的です。XLUはここ数カ月、静かなスターパフォーマーです。さらに、AIやデータセンター、仮想通貨、EVなどのテクノロジーのおかげで電力需要が持続的に伸びれば、XLUはまだまだ上昇する可能性があります。

免責事項

ディスクロージャー

本記事は株式投資分析ツールTipRanksの許可を得て、XLU ETF: The Formerly Sleepy Utilities Sector Has Awakened原文の翻訳を中心にまとめています。

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この記事のライター
金融コンテンツ・エディター兼翻訳者。 米国株など米国金融市場を中心に金融関連コンテンツの翻訳・作成にこれまで従事。 日本経済新聞社英文編集部門勤務を経て、約20年にわたり外資系金融機関などで金融関連コンテンツの翻訳・編集業務およびマーケティングサポートを担当。 米国の個人投資家向け金融メディア「モトリーフール」の日本語サイト(今は撤退)で、翻訳・編集業務を担当した経験もあり。 日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)
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