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トランプ氏再選で選ぶべき銘柄は?また、バイデン氏再選の場合は?

ストーリーハイライト

不透明な選挙を乗り越える上で、投資家は次期米大統領の政策が市場の先行きをどのように左右するかを見極めることが重要です。

11月の米大統領選挙は、ジョー・バイデン氏とドナルド・トランプ氏の一騎打ちとなりそうです。大統領選挙は、米国経済と世界の経済・政治情勢に大きな影響を与えます。勝敗に関係なく下降線をたどりそうな中国との貿易関係を除けば、ほぼすべてのことに対する候補者の見解の違いは、世界の資産運用者の間で長期的な資産ポジショニングを形成する重要な要因の1つとして浮上しています。

地政学や財政政策は、大統領が替わったとしても、一夜にして変わることはありません。しかし、投資家センチメントは急速に変化する可能性があり、市場を動かす重要な要因として、潜在的な勝ちトレードと負けトレードに対する市場の認識を見極めることが賢明でしょう。

トランプ2.0の受益者は?

選挙が株式市場に与える影響について答えを探す場合、歴史を参考にできます。トランプ氏が2016年の選挙で勝利したとき、投資家は減税、規制緩和、「米国第一主義」の強調が関連企業に恩恵をもたらすと予想し、小型株や金融株に群がりました。トランプ氏の1期目の代表的な業績の1つは税制改革で、これにより企業収益が拡大し、株価は史上最高値を更新しました。

企業や業界に対する監視や監督を緩和へ

今回も同じようなことが起こるかもしれず、企業や業界に対する監視や監督を緩和すると予想されることから、いくつかのセクターが大きな恩恵を受けることになるでしょう。テクノロジーとヘルスケアの両業界は、大企業ほど独占禁止法上の圧力が弱まると考えられ、有利なはずです。

バイデン政権は、独占禁止法の優先事項としてヘルスケア業界を対象としてきたことから、ユナイテッドヘルス(UNH)は株価が圧迫されてきましたが、トランプ2.0では株価が回復する可能性があります。

トランプ2.0で輝くテック株、大手銀行株

「トランプ・トレード」は医療大手だけにとどまりません。バイデン大統領の下、司法省はアマゾン(AMZN)アップル(AAPL)アルファベット(GOOGL)のグーグル部門を含む国内最大のテック企業への監視を強化してきました。どの企業も、トランプ政権の下では監視が緩む方向となり、ビジネス帝国を築き続けることができるでしょう。なお、メタ・プラットフォームズ(Meta)のフェイスブックのようなソーシャル・ネットワーク・プラットフォームを提供する企業は、言論の自由や消費者のプライバシー問題への対応で監視下に置かれるでしょう。

トランプ氏がホワイトハウスに再登場した場合、金融、特に大手銀行が狙い目です。前任期中にトランプ氏は、金融機関規制を緩和し、「Too big to fail(大きすぎて潰せない)」カテゴリーの基準を引き上げました。今回、同氏は、バーゼルIIIの資本要件引き上げを廃止し、JPモルガン(JPM)ウェルズ・ファーゴ(WFC)のような銀行がより高い利益を維持できるようにすると述べています。

強化される「米国第一主義」

トランプ氏は関税政策をさらに強化すると約束しているため、米国内で販売する国内生産企業は輸入企業よりも有利になるでしょう。トランプ大統領はすべての中国製品に60%の関税をかけると脅していますが、米国に製品を送るどの国もトランプ大統領の保護主義的貿易政策から免れることはできないでしょう。関税はまたドルを支え、米国の輸出企業が海外で商品を売るのを難しくするでしょう。

米国の資本財・テクノロジーセクターは、税制優遇措置や補助金増額など、連邦政府による支援が継続され、おそらく倍増することで恩恵を受けるでしょう。バイデン政権は、経済的に重要な産業のリショアリングと重要な国内生産の確保を目指したトランプ1.0の取り組みを継続し、リショアリング機運の中心的存在であるキャタピラー(CAT)イートン(ETN)ロックウェル・オートメーション(ROK)などの資本財企業に支援の手を差し伸べました。

米国内に工場やデータセンターを建設する企業はさらなる恩恵を享受へ

 

トランプ2.0は、こうした取り組みを最大限に進め、米国内に工場やデータセンターを建設する企業をさらに支援するでしょう。そのため、インテル(INTC)台湾積体電路製造(TSMC 、TSM)など、半導体法の直接的な受益者であるテック企業は、連邦政府による支援の拡大を享受するとみられます。しかし、エヌビディア(NVDA)に対しては、中国への輸出に対する監視の目が厳しくなるでしょう。

クリーンエネルギー後退、石油・天然ガスの生産拡大へ

トランプ2.0では、インフレ抑制法(IRA)など、クリーンエネルギー産業を支援するバイデンの政策を後退させると予想されているため、クリーンエネルギーやその他の「環境」関連銘柄は二重の打撃を受けるかもしれません。

同時に、クリーンエネルギー生産への需要は、従来型エネルギー生産の増加によって落ち込む可能性もあります。また、ベーカー・ヒューズ(BKR)エクソンモービル(XOM)のようなエネルギー大手は、トランプ2.0による米国の石油・天然ガス生産の拡大促進、環境規制の後退を歓迎するに違いありません。しかし、エネルギー価格はさまざまな要因に左右され、その多くが政権の手の届かないところにあるため、投資家は注意が必要です。つまり、生産量が増えれば株価が上がるとは限りません。

EVに優しい政策も転換へ

トランプ氏はまた、電気自動車(EV)メーカーへの補助金をすべて廃止し、市場主導で勝者を決定する手法を採用する見通しです。現在のEVに優しい政策にもかかわらずテスラ(TSLA)の販売が低迷していることから、トランプ2.0ではフォード・モーター(F)ゼネラル・モーターズ(GM)といった既存自動車メーカーが主導権を握る可能性があります。

防衛政策の影響は?

トランプ1.0では、欧州のNATO(北大西洋条約機構)同盟国に対し、米国の軍事力に頼るのではなく、自国の防衛費を負担するよう働きかけました。今回、トランプ氏は米国をNATOから完全に撤退させると脅しています。たとえそれが空威張りであったとしても、好戦的なロシアによるリスクが加速している以上、ヨーロッパ諸国は自国武装を強化する必要が高まります。

欧州の軍拡競争はすでに始まっていますが、欧州連合(EU)は米国の軍事支援への依存を減らし、ロシアの侵略に備えるためにさらに努力する必要があります。欧州の軍需メーカーは24時間体制で取り組んでいますが、欧州大陸の既存の能力では到底足りません。

欧州防衛強化は米国の航空宇宙・防衛メーカーへの恩恵に

ロシアが2年前にウクライナに侵攻して以来、欧州の軍事関連購入の60%近くは米国の請負企業に支払われています。ロッキード・マーチン(LMT)ゼネラル・ダイナミクス(GD)ノースロップ・グラマン(NOC)といった米国の航空宇宙・防衛メーカーは、今後何年にもわたって欧州の自衛努力に大きな役割を果たし、その過程で大きな利益を得ることになるでしょう。

一方、トランプ2.0では、米国政府発の契約は沈静化するかもしれません。トランプ氏は孤立主義的な米国の支持者であり、世界的な問題を解決することよりも、米国が「自国のビジネスに専念する」ことを重視しています。そうなれば、ウクライナや他の同盟国への武器供与のための資金が減ることになり、連邦政府の財源から防衛関連企業に流れる資金が減ることになります。とはいえ、トランプ1.0では孤立主義を声高に言う割には国防費を増やしたので、それほど明確ではありません。

全体的には、防衛企業にとってはバイデン2.0の方がベター

全体としては、バイデン2.0の方が防衛企業にとっては望ましいでしょう。現在、バイデン政権は同盟国に寛大で、米国製の武器を大量に提供してきました。11月にバイデンが勝利すれば、この外交政策アジェンダが永続化し、軍需産業への連邦資金の流れが維持されるか、あるいはさらに増大する可能性が高いです。

バイデン・トレード:グリーン産業にさらなる恩恵

現職の2期目は、政策実施の継続を意味し、不確実性を軽減する可能性が高いです。したがって、バイデン2.0ではインフラ投資は継続され、建設業者、資材メーカー、建設機械メーカーに恩恵がもたらされるでしょう。

そしてトランプ2.0とは違い、バイデン氏が再選されれば、クリーンエネルギーの送電やEV充電ネットワークへの投資を引き続き支持するため、「グリーン」産業の株価上昇が予想されます。

EV充電ネットワーク企業や太陽光発電メーカーに追い風か

バイデン大統領が新たに発表した6億2300万ドルの助成金プログラムは、全米にEV充電ネットワークを構築することを目的としており、チャージポイント(CHPT)のような企業に恩恵があります。バイデン2.0のもう一つの受益者は、ファースト・ソーラー(FSLR)エンフェーズ・エナジー(ENPH)のような太陽光発電メーカーでしょう。マスク氏とバイデン政権との愛憎関係にもかかわらず、テスラやその同業他社は、補助金や税制優遇措置で何百万ドルもの恩恵を受け、より良くなる可能性が高いでしょう。

どんな選挙結果でも問題ない銘柄は

インフラ投資は超党派の課題であるため、「米国再建」の機運はどの政権下でも存続し、繁栄するでしょう。つまり、バルカン・マテリアルズ(VMC)RPMインターナショナル(RPM)といった建材メーカーは、誰が大統領になろうと、住宅や橋の建設、メキシコ国境の壁建設に欠かせないため、好調に推移するとみられます。

さらに、ジェイコブス・ソリューションズ(J)のようなエンジニアリング・サービス会社から、GXOロジスティクス(GXO)のような物流管理サービス、ユナイテッド・レンタル(URI)のような重機レンタル企業まで、「リショアリング」トレンドに関連するすべての銘柄が、両大統領の下で成長を続けるはずです。

終わりに

選挙サイクルごとに米国の二極化が進むなか、選挙結果は、政府の様々な政策を通じていろいろなセクターの株式に顕著な影響を与える可能性があります。しかし、中長期的な株式市場全体のパフォーマンスに関しては、選挙は景気サイクルほど大きな影響を与えないことは、歴史が示しています。そのため投資家は、来年1月に誰が次期大統領に就任するかに注目しつつ、経済データや投資候補先のファンダメンタルズを注意深く観察することが肝要でしょう。

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ディスクロージャー

本記事は株式投資分析ツールTipRanksの許可を得て、Trump vs. Biden: Which Stocks to Choose for Each Election Outcome原文の翻訳を中心にまとめています。

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この記事のライター
金融コンテンツ・エディター兼翻訳者。 米国株など米国金融市場を中心に金融関連コンテンツの翻訳・作成にこれまで従事。 日本経済新聞社英文編集部門勤務を経て、約20年にわたり外資系金融機関などで金融関連コンテンツの翻訳・編集業務およびマーケティングサポートを担当。 米国の個人投資家向け金融メディア「モトリーフール」の日本語サイト(今は撤退)で、翻訳・編集業務を担当した経験もあり。 日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)
米国株投資の銘柄分析はTipRanks
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