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セールスフォースのAIへの迅速かつ積極的な投資が魅力的なリターンに結実へ

ストーリーハイライト

世界をリードする顧客関係管理(CRM)ソフトウェア企業であるセールスフォース(CRM)は、顧客に高度な機能を提供するためにAIへの積極的な投資を行っています。こうした投資は長期的に利益をもたらす可能性が高く、同社は競争の脅威をかわしながら、持続的な競争優位性を享受できるとみられます。

セールスフォース・ドットコムのCEOであるマーク・ベニオフ氏は、同社がAI戦略を完璧に遂行していると考えていますが、一部のアナリストは、同社はAIへの投資をさらに積極的に行う必要があると見ています。

セールスフォース、アインシュタインAIを全主要製品に組み込む

セールスフォースは、AIなどの新技術への戦略的投資を通じて、顧客体験の向上に重点的に取り組んでいます。 同社のAI戦略は、AI機能のスイートである「アインシュタイン」を中心に展開されています。 セールスフォースは、同社の主要製品すべてにアインシュタインを統合しています。

アインシュタインの主な統合機能には、Einstein for Salesがあります。これは、AIを活用して有望な取引を特定し、そのような取引を効率的にまとめるための手順を提案することで、企業の営業プロセスを改善します。このツールは、営業担当者にリアルタイムの洞察とガイダンスを提供し、潜在顧客との効率的なやりとりを可能にします。

顧客サービス業務の効率化へAI搭載チャットボットを提供

Einstein for Serviceは、顧客のやり取りの方法を強化するためのもう一つのAI製品です。同社は、顧客サービス業務の効率化を図るAI搭載のチャットボット(自動会話プログラム)を提供しており、ナレッジベースから得た顧客に関する理解に基づいて、顧客からの問い合わせに対する解決策を提案する機能を備えています。

さらに、同社はEinstein for Marketingも提供しており、これは顧客の好みを深く分析した上で、マーケティング担当者がパーソナライズされた広告キャンペーンを構築するのを支援するものです。

AIスタートアップ企業への着実な投資

前述の通り、既存製品にAIを組み込むことに加え、セールスフォースはユニークな技術に早期にアクセスするためにAIスタートアップ企業への投資に出ました。同社は、セールスフォース・ベンチャーズを通じて、2023年3月にスタートアップ企業に2億5000万ドルを投資する「生成AIファンド」を立ち上げ、その後、AIの人気が高まる中、投資目標額を5億ドルに引き上げました。

長期的には、これらのスタートアップ企業が開発した新しい技術を自社製品に統合することで、セールスフォースは競合他社に対する優位性を獲得できるでしょう。

セールスフォースによるAI関連の投資で注目すべきものとしては、世界最大のオープンソースAIコミュニティであるHugging Faceへの2億ドルの投資が挙げられます。Hugging Faceは、AI開発者にとって頼れる存在として急速にその地位を確立しており、この戦略的投資は、AI技術を活用した差別化された製品提供を通じて長期的にCRMソフトウェアセクターを独占するという、セールスフォースのAI戦略の重要な柱となっています。

利益率の改善に注力

上述のAI戦略の実行に重点を置く中で、セールスフォースは長期的な収益性目標から逸脱しておらず、これは心強い兆候です。実際、同社は営業利益率の向上を目指して構造改革にさらに力を入れており、その成果はすでに現れています。

2025年度第2四半期(2024年5-7月期)の非GAAPベースの営業利益率は33.7%に達し、前年同期比で2.10パーセントポイント以上改善しました。GAAPベースの営業利益率も19.1%と過去最高を記録し、セールスフォースの収益性の大幅な改善を裏付けています。

戦略的なコスト管理イニシアティブを進める

この顕著な利益率の改善は、過去18カ月間にわたる人員配置の最適化など、戦略的なコスト管理イニシアティブの成果です。同社は、このコスト再設定戦略の一環として、不動産費や出張費の削減にも成功しており、営業利益率の向上に貢献しています。

コスト管理に加え、クラウドサービスやAI対応のビジネスソリューションなど利益率の高い製品にフォーカスしたことが利益率の改善につながりました。

ウォール街アナリストの見方は?

セールスフォースのAI戦略と前述の投資は、ウォール街のアナリストの間でも注目されています。例えば、ゴールドマン・サックスのアナリスト、カッシュ・ランガン氏は、セールスフォースは市場で最も過小評価されているAI勝者の1つであると考えています。

同氏は先週のセールスフォースの四半期決算発表を分析した上で、企業向け生成AIエージェントの作成と展開における同社の初期の成功は、長期的にはAI投資から利益を得るための基盤を築くことになるだろうとコメントしています。

今月末発表予定のAIソリューションに注目

バークレイズのアナリスト、ライモ・レンショー氏は、これまでのセールスフォースのAIの進捗を認めながらも、今月末に開催されるDreamforce 2024イベントで発表予定の新しいAIソリューションの成功が、セールスフォースの株価の長期的な見通しを決定する鍵となると先週コメントしました。

しかし、セールスフォースのAIへの取り組みを評価しているアナリストばかりではありません。RBCキャピタル・マーケッツのソフトウェア株式調査部門のマネージング・ディレクター、リシ・ジャルーリア氏は、セールスフォースは生成AIの主要な受益者となる可能性があると考える一方で、同社はこうした市場機会を十分に活かせていないと主張しています。

コンセンサス評価は「中程度の買い」

TipRanksによれば、セールスフォース株の過去3カ月間のアナリストレーティングは、「買い」が24人、「中立」が8人、「売り」が1人で、コンセンサス評価は「中程度の買い」です。平均目標株価は304.48ドルで、今後12カ月で20%の上値余地を示唆しています。

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ディスクロージャー

本記事は株式投資分析ツールTipRanksの許可を得て、Salesforce’s (CRM) Fast and Furious Investments in AI Point to Lucrative Returns原文翻訳を中心にまとめています。

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この記事のライター
金融コンテンツ・エディター兼翻訳者。 米国株など米国金融市場を中心に金融関連コンテンツの翻訳・作成にこれまで従事。 日本経済新聞社英文編集部門勤務を経て、約20年にわたり外資系金融機関などで金融関連コンテンツの翻訳・編集業務およびマーケティングサポートを担当。 米国の個人投資家向け金融メディア「モトリーフール」の日本語サイト(今は撤退)で、翻訳・編集業務を担当した経験もあり。 日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)
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