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ビッグデータ分析のパランティア:フリーキャッシュフローの大企業に変貌へ

ストーリーハイライト

ウォール街は、ビッグデータ分析企業パランティア・テクノロジーズ(NYSE:PLTR)の2023年第4四半期決算を歓迎し、「ブートキャンプ(短期集中型トレーニングプログラム)」の成功による民間(非政府)部門の力強いモメンタムと成長加速を強調しました。同社はまた、フリーキャッシュフローの大企業に変貌しつつあります。しかし、バリュエーションについては注意が必要です。

パランティアの株価は決算発表後に約35%も急騰しました。AI主導のデータ分析とインテリジェンス・ソフトウェアの企業であるパランティアは、ブートキャンプでの強力な牽引力、AIP(人工知能プラットフォーム)の採用拡大、利益改善を強調し、投資家に感銘を与えました。経営陣は、民間部門の継続的な加速を期待しています。そして、パランティアは徐々にフリーキャッシュフローの大企業に変貌しつつあります。

爆発的な民間部門の成長を牽引するブートキャンプ

パランティアの第4四半期報告書のハイライトの一つは、民間部門での爆発的な成長です。同社のビジネスは2つに分かれています。売上高の53%を占める政府部門と、残りの47%を占める民間部門です。政府部門は第4四半期に11%の成長を記録するなど、依然として急成長していますが、民間部門で本当の興奮が高まっています。

実際、パランティアの民間部門の売上高は前年同期比32%増となりました。これは、顧客数が55%増の221社と大幅に増加したことによります。このような急速な顧客獲得の成功は、パランティアが非常に効果的な顧客獲得戦略であるブートキャンプを実施したことに起因しています。

ブートキャンプとは?

パランティアのブートキャンプは、自社製品、特にパランティアのAIPの機能を紹介するためにデザインされた集中的な実践型ワークショップです。

パランティアの戦略は、CEOやCTO(最高テクノロジー責任者)に働きかけ、最高のAIチームをブートキャンプに出すよう促します。同社の言葉を借りれば、次のようなアプローチです。

「御社がこれまでAIで行ってきたことすべてを活用し、御社の最高の人材に託していただければ、弊社の10時間のブートキャンプで御社のデータを実行します。御社の結果と、弊社の結果を比較してください。弊社の10時間と御社の10カ月の比較です。どのような製品、ベンダー、ハイパースケーラーをお選びいただいても、弊社は対応いたします」(第4四半期決算説明より)

多くのエグゼクティブがパランティアのプラットフォームを試したがっています。このような没入型の「ワークショップ」に対する需要は急増しています。同社は10月以降、560回という驚異的なセッションを実施し、1年鋳ないで500という当初の目標をすでに超えています。

ブートキャンプの売上高成長への効果

パランティアのブートキャンプ戦略は、民間部門および全社的な売上高成長を促進する上で重要な役割を果たしました。実際、パランティアの経営陣は、このアプローチによって同社が重要な取引を獲得したことを強調しています。パランティアがビジネスにもたらす具体的な成果を目の当たりにした他の企業幹部は、この革新的なテクノロジーを見過ごすことのできないチャンスと認識し、採用せざるを得なくなりました。

パランティアの第4四半期プレゼンテーションに掲載された以下の棒グラフは、ブートキャンプが商業顧客数を増加させることに成功していることを明確に示しています。特に、TTM(過去12カ月)ベースで、民間顧客数は前四半期比で22%増加しました。これは、第1四半期、第2四半期、第3四半期にそれぞれ達成された8%、4%、12%に相当する数値と比較すると、素晴らしい加速を意味しています。

出典:パランティア第4四半期決算プレゼンテーション

パランティアの民間顧客数がこのように素晴らしい勢いを見せていることから、ウォール街が今後数四半期に売上高が加速するシナリオを描いていることは明らかです。経営陣は、2024年の米国売上高が6億4,000万ドルを超えるというガイダンスを提示しており、少なくとも40%の成長率を示しています。

フリーキャッシュフローの創出拡大続く

2023年第4四半期の売上高は、官公庁向けと民間向け合わせて前年同期比20%増の6億800万ドルと好調な伸びを示し、パランティアは徐々に顧客あたり収益およびコストの改善を享受し、フリーキャッシュフロー・マシンに変貌しつつあります。

パランティアの全体的な収益性について補足すると、調整後営業利益率は前年の22%から第4四半期には34%に急上昇しました。調整後営業利益率は5四半期連続で拡大し、GAAPベースの純利益は5四半期連続でプラスとなりました。

GAAPベースの純利益は9,300万ドルで、利益率は15%でした。パランティアは現在、GAAPベースでも大きな黒字であり、利益率は拡大し始めたばかりです。この9,300万ドルには37億ドルのキャッシュポジションからの4,450万ドルの受取利息が含まれていますが、GAAPベースであることを考えれば、利益は利益です。

調整後のフリーキャッシュフローは50%のマージンに相当

フリーキャッシュフローに話を戻すと、調整後で3億500万ドルとなり、これは50%のマージンに相当します。なお、この数字には1億3,260万ドルの株式報酬(SBC)費用が含まれているため、大目に見る必要があります。

経営陣のガイダンスは、調整後フリーキャッシュフローが8億ドル~10億ドルになると予想していますが、それでも非常に保守的と考えられます。

いずれにせよ、この数字でさえ、パランティアがいかに急速にフリーキャッシュフローの大企業に変貌しつつあるかを示しています。2年前の2022年度の調整後フリーキャッシュフローはわずか2億300万ドルでした。

パランティア株は上昇しすぎたか?

パランティアの卓越したオペレーションにもかかわらず、株価が割高になりすぎている可能性は無視できません。株価は現在、経営陣の今年の調整後フリーキャッシュフローのガイダンスレンジ上限の51倍で、パランティアが巨大なプレミアムで取引されていることを言うのにこれ以上の証拠は必要ないでしょう。

中期的に飛躍的な成長を遂げれば、最終的にこの倍率を正当化できるかもしれませんが、株価の大きな変動が予想されます。

アナリストによれば、パランティア株は「買い」か?

ウォール街の現在のセンチメントは、株価の大幅上昇を受けてやや控えめになっているようです。TipRanksによれば、過去3カ月間のアナリストレーティングは、「買い」が3人、「中立」が5人、「売り」が5人で、コンセンサス評価は「中立」です。アナリストの平均目標株価は18.20ドルで、今後12カ月で25.35%の下値余地を示唆しています。

パランティア株の売買でどのアナリストをフォローすべきか迷っているなら、(1年間の時間枠で)最も収益性の高いアナリストはバンク・オブ・アメリカ証券のMariana Perez氏で、1レーティングあたりの平均リターンは70.89%、成功率は100%となっています。

結論

パランティアの2023年第4四半期決算は、インパクトのあるブートキャンプと製品に対する需要の高まりに後押しされ、株価を大きく押し上げました。

経営陣のガイダンスに基づけば、民間部門の驚異的な売上高はさらに加速するとみられます。一方、同社の利益率の高いビジネスモデルを考えると、パランティアのフリーキャッシュフロー生成は計り知れない可能性を示しています。パランティアは、AIを活用した意思決定ソフトウェアの分野で引き続き優位に立つとみられます。

なお、こうしたポジティブな指標にもかかわらず、株価の割高なバリュエーションをアナリストは懸念しています。

免責事項

ディスクロージャー

本記事は株式投資分析ツールTipRanksの許可を得て、Palantir Stock (NYSE:PLTR): Turning Into a Free Cash Flow Powerhouse原文の翻訳を中心にまとめています。

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この記事のライター
金融コンテンツ・エディター兼翻訳者。 米国株など米国金融市場を中心に金融関連コンテンツの翻訳・作成にこれまで従事。 日本経済新聞社英文編集部門勤務を経て、約20年にわたり外資系金融機関などで金融関連コンテンツの翻訳・編集業務およびマーケティングサポートを担当。 米国の個人投資家向け金融メディア「モトリーフール」の日本語サイト(今は撤退)で、翻訳・編集業務を担当した経験もあり。 日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)
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