米国株

ウォール街投資銀行、リゾート・タイムシェア関連銘柄の長期的なアウトパフォームを予想

ストーリーハイライト

バケーション産業は投資家に様々な機会を提供しますが、時に見落とされがちなのがタイムシェア・セクターです。タイムシェアは、複数の共同所有者がいる不動産です。その目的は、リゾートをより手頃な価格で提供することです。

このモデルはミレニアル世代にとって特に魅力的とみられ、他の年齢層よりも高い割合でタイムシェアの権利を購入しています。ミレニアル世代は比較的若いため、タイムシェア会社にとっては、今後10年以上にわたって健全な事業基盤が確保できる見通しです。

しかし、多くのタイムシェア銘柄は投資家に見放されていて、株価が割安になっています。米主要投資銀行JMPのアナリスト、アーロン・ヘクト氏は、タイムシェア銘柄の健全な将来性と現在の安値に注目し、強気のスタンスでカバレッジを開始しました。

短期的な逆風は織り込み済み、株積み増しの好機に

同氏は次のように述べています。「当社の見解では、短期的な逆風は織り込み済みであり、2024年から2025年の予想に反映されています。株価は過去のマルチプル・レンジの底に位置しており、当社の見解では、今が株を積み増す好機です」

このような背景から、ヘクト氏は、長期的にアウトパフォームする素地があると考えるタイムシェア業界3銘柄を選びました。TipRanksのデータベースを利用して、これらの銘柄に対するウォール街の広範な見方を見てみました。

ヒルトン・グランド・バケーションズ (HGV)

最初に取り上げるタイムシェア銘柄は、ホテルやレジャーで有名なタイムシェア企業、ヒルトン・グランド・バケーションズです。同社は、有名なヒルトン・ホテルから独立し、2017年からはタイムシェアのニッチ分野で独立して活動しており、米国16州で事業を展開しています。カリフォルニア、フロリダ、ハワイのほか、ワシントンDCやラスベガスにも施設を展開しています。また、カナダ、英国、欧州、日本、メキシコ、カリブ海諸国など、海外でも事業を展開しています。

同社のポートフォリオには200カ所以上の施設が含まれ、約70万人のタイムシェア・オーナーがアクセス可能です。同社のタイムシェア・オーナーは、ゴルフリゾート、ビーチフロント、スキー場、カジノ、都市景観など、幅広いアメニティを備えた施設から選ぶことができます。リゾートの多くには、子供や家族向けのアメニティもあり、バケーションを楽しむ人たちは、スポーツ、ショッピング、スパ、映画、レストラン、その他たくさんのアトラクションを見つけることができます。

ハワイ・マウイ島の山火事で打撃

昨年、ヒルトン・グランドはマウイ島の山火事の影響を受け、ハワイの施設の売上高は打撃を受けました。同社がハワイ諸島に所有するホテルのうち、マウイ島にあるのは2軒のみで、どちらもラハイナ火災の被害には遭いませんでしたが、ハワイへの観光客の減少と休暇のキャンセルがそれぞれ打撃を与えました。

ヒルトン・グランドの直近決算は2023年第3四半期ですが、内容はややまちまちでした。売上高は前年同期比9%減の10億2,000万ドルで、予想を2,000万ドル下回りましたが、非GAAP(米国会計基準)ベースのEPS(1株当たり利益)は98セントで、予想を1セント上回りました。

強固な資産ポートフォリオで明るい見通し

JMPのヘクト氏は、ヒルトン・グランドの強固な資産ポートフォリオに基づき、明るい見通しを示しています。同氏は次のように述べています。「ヒルトン・グランドは、ユニークなビジネスモデルを持っており、200以上のリゾートで735万人の会員を有しています。(中略)調整後EBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)マージンベースは27.8%で、同業他社を大きく上回っています」

ヘクト氏は、「アウトパフォーム(買い)」レーティングを付け、目標株価の55ドルは、今後12カ月で24.5%の上値余地を示唆しています。

TipRanksによれば、過去3カ月間のアナリストレーティングは、「買い」が3人、「中立」が1人で、コンセンサス評価は「強気買い」です。48.25ドルの平均目標株価は、今後12カ月で9%の上値余地を示唆しています。

トラベル+レジャー (TNL)

JMPが注目する次の銘柄は、トラベル+レジャーです。同社は、バカンスに最適なフロリダ州オーランドを本拠地としており、主な事業は、バケーションに最適な場所でのタイムシェア物件の開発、販売、管理です。

タイムシェアに加え、トラベル+レジャーはタイムシェアの交換事業も手がけています。その名の通り、交換はタイムシェアのオーナー同士が交換するもので、オーナーはある場所の1週間を別の場所の他の人の時間と交換します。トラベル+レジャーがRCIを通じて運営するこの事業は、350万人以上の会員を数え、直近の四半期決算報告によれば、1億7,000万ドル以上の売上高を創出しました。

中核となるタイムシェア事業では、トラベル+レジャーは自社不動産で81万6,000人以上のオーナーにサービスを提供しています。この中核事業が強力なモデルの基盤となっており、最近の四半期では売上高と利益が緩やかな上昇傾向を示しています。直近の2023年第3四半期の売上高は9億8,600万ドルで、前年同期比5%増となり、アナリスト予想も1,430万ドル上回りました。非GAAPベースのEPSは1.54ドルで、予想を8セント上回りました。

手厚い株主還元を実施

これらの健全な業績に、同社はリターン志向の投資家が魅力的に感じるべきもう一つの特徴、すなわち手厚い株主還元への着実なコミットメントで補完しました。同社は自社株買いプログラムを実施しており、第3四半期には6,500万ドル相当の自社株買いを実施しました。また、同社は普通株配当を実施しており、前回は12月29日に1株当たり45セントを支払いました。普通株1株当たり年間1.80ドルの配当は、4.35%の配当利回りをもたらし、インフレに打ち勝つには十分すぎるほどです。

ヘクト氏はトラベル+レジャーにも楽観的で、「現在、株価は、2025年の調整後EBITDA予想の6.5倍で取引されており、長期的な過去平均の7.8倍を下回っています」と指摘しています。

同氏は、「アウトパフォーム(買い)」レーティングでカバレッジを開始し、目標株価の50ドルは、今後12カ月で21%の上値余地を示唆しています。

過去3カ月間のアナリストレーティングは、「買い」が6人、「売り」が1人で、コンセンサス評価「中程度の買い」です。株式は41.30ドルで取引されており、平均目標株価の48.43ドルは、今後12カ月で17%の上値余地を示唆しています。

マリオット・バケーションズ・ワールドワイド (VAC)

マリオットはホテル業界で最も有名な企業の1つであり、マリオット・バケーションズ・ワールドワイドは、マリオットの名声と評判に基づいて独立した純粋なタイムシェア事業体として2011年に設立され、タイムシェア・リゾートを運営する世界の主要企業の1つです。同社は合計で120近くのリゾートを管理し、18,500以上のヴィラをタイムシェアで購入することができます。

タイムシェア購入者は、米国、カリブ海諸国、中米、欧州、アジア、オーストラリアで場所を見つけることができます。また、交換ネットワークや第三者管理ネットワークを通じて、場所の交換を希望する顧客のために、タイムシェアの交換やレンタルの幅広いポートフォリオを提供しています。

マリオット・バケーションズは、タイムシェア・オーナーシップ事業において、70万人以上のオーナーおよび会員ファミリーを誇り、顧客満足度は90%です。同社の交換ネットワークは90カ国以上で運営され、約3,200の施設、約160万人の会員を擁しています。レジャービジネスを支える強固な基盤です。

マウイ島の山火事の影響

マリオット・バケーションズは昨年、いくつかの逆風に見舞われ、特に複数の施設を所有するマウイ島の山火事の影響を受けました。これらの施設は物理的な損傷は報告されていませんが、直近の2023年第3四半期の売上高は、前年同期比3.3%減の11億9,000万ドルで、予想を1,000万ドル下回りました。非GAAP基準の希薄化後EPSは1.20ドルとなり、予想を94セント下回りました。株価は過去1年で約43%下落しています。

短期的な逆風は指摘されているものの、ヘクト氏は、株価の低迷が好機となり、長期的な上昇を予想しています。同氏は、次のように述べています。「顧客とプロダクトの質を考慮すると、マリオットは、タイムシェア業界では依然として当社が選好するブランド企業です。現在、株式は2025年予想調整EBITDAの5.6倍で取引されており、長期的な過去平均の10.0倍を下回っています」

ヘクト氏は、「アウトパフォーム(買い)」と評価し、目標株価の105ドルは、今後12カ月で23%の上値余地を示唆しています。

ウォール街はそれほど強気ではありません。過去3カ月間のアナリストレーティングによるコンセンサス評価は「中立」です。現在の株価は85.22ドルで、平均目標株価の92.8ドルは、今後12カ月で9%の上値余地を示唆しています。

魅力的なバリュエーションで取引されている銘柄のグッドアイデアを見つけるには、TipRanksの株式に関するあらゆる見識を統合し、新設されたツールであるTipRanksのBest Stocks to Buyをご覧ください。

免責事項

ディスクロージャー

本記事は株式投資分析ツールTipRanksの許可を得て、JMP Says Timeshare Stocks Will Outperform Over the Long Term; Here Are 3 Names to Consider原文の翻訳を中心にまとめています。

米国株
この記事のライター
金融コンテンツ・エディター兼翻訳者。 米国株など米国金融市場を中心に金融関連コンテンツの翻訳・作成にこれまで従事。 日本経済新聞社英文編集部門勤務を経て、約20年にわたり外資系金融機関などで金融関連コンテンツの翻訳・編集業務およびマーケティングサポートを担当。 米国の個人投資家向け金融メディア「モトリーフール」の日本語サイト(今は撤退)で、翻訳・編集業務を担当した経験もあり。 日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)
米国株投資の銘柄分析はTipRanks
最新記事