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ウォール街大手証券が選んだAI関連株ベスト3

ストーリーハイライト

AI(人工知能)は、オートメーション化、マーケティング、翻訳など様々な用途に応用され、デジタル業界を席巻しています。2022年末に、機械との相互作用に根本的な変化をもたらす可能性を秘めた「生成AI」が登場したことで、さらに進化した直感的な使い方が可能になりました。

AI技術は既に定着しつつあり、投資家にチャンスをもたらしつつあります。米大手証券会社ジェフリーズのアナリスト、ブレント・ティル氏は、AI分野の分析を行い、大手IT企業数社を長期的な優良銘柄に位置付けました。

AIの「ツルハシやシャベル」関連投資が好調

ティル氏は自らの選択基準を説明し、「AIの”ツルハシやシャベル”(周辺ビジネス)に関連する投資が好調を続けています。AIへの支出は、他のインフラ提供企業、そして企業が生成AIの恩恵を受けることを可能にするアプリケーションベンダーにも広がるとみています」と述べています。

ティル氏の推奨銘柄には、AIの拡大と既に深く結びついている、時価総額上位7社のいわゆる「メガキャップ」と呼ばれる銘柄が含まれます。その中から今回取り上げるのは、マイクロソフト(NASDAQ:MSFT)、アルファベット(NASDAQ:GOOGL)、そしてメタ・プラットフォームズ(NASDAQ: META)の3社です。これらの大手企業とティル氏のコメントを詳しく見ていきましょう。

マイクロソフト

まずは、ティル氏が「AIのトップ銘柄」と評するマイクロソフトです。同社は、人気製品の組み合わせと健全な経営により、テクノロジー業界、さらには経済全般の頂点にまで上り詰めた企業です。現在は時価総額3兆ドルを超え、米国株式市場における最高評価の企業となっています。

ここで重要なのは、マイクロソフトがAIに深く関わっているという点です。同社は、現在の生成AIブームの火付け役となったChatGPTの開発元であるOpenAIを長年にわたって支援してきました。マイクロソフトは2019年からOpenAIに出資しており、今年初めにさらに100億ドルを投資しました。最近のピュー・リサーチ・センターの調査によると、米国成人の23%が何らかの形でChatGPTを使用したことがあり、7カ月前の18%から上昇しています。

自社製品にAIを統合

OpenAIを支援することで、マイクロソフトは単に勝ち馬を選んだというだけではありません。マイクロソフトはAIチャットボット(自動会話プログラム)技術へのアクセス権を獲得し、Bing検索エンジンやWindowsオペレーティングシステム、Officeソフトウェアに統合しています。最近では、AIベースのオンライン・アシスタント「Copilot」をリリースし、Windowsでリアルタイムのサポートを提供しています。

より重要なのは、AIをAzureクラウドプラットフォームに統合したことです。Azureはすでに、あらゆるオンラインニーズに対応できる200を超えるソフトウェアツールや製品を提供しています。ここにAIが加わることで、AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)やグーグル・クラウドなどの競合との差別化も可能となるでしょう。

マイクロソフトの2024年第2四半期(2023年10-12月期)の決算報告では、Azureは既に売上高259億ドルを計上しています。同期の総売上高は620億ドルで、前年同期比18%増、アナリスト予想を8億9000万ドル上回りました。EPS(1株当たり利益)は2.93ドルで、予想を16セント上回りました。

マイクロソフトの全社的なAI導入を高く評価

ティル氏によると、マイクロソフトの全社的なAI導入が、この銘柄を魅力的にしている重要な点です。同氏は次のように述べています。「私たちは、マイクロソフトがOpenAIとの提携により、生成AIの主要な受益者としての地位を確立したと考えています。AI導入の初期段階ではありますが、マイクロソフトのCopilotが2024年以降に収益を押し上げる可能性が高いと見ています。今日、マイクロソフトのCopilotの大半が一般に提供されていますが、企業の関心が高まり続けていることを特筆しておきます」

ティル氏はマイクロソフト株に「買い」レーティングを付け、目標株価の550ドルは、今後12カ月で30%の上値余地を示唆しています。

ウォール街の見方は?

マイクロソフトは常にアナリストの注目を集めており、TipRanksによれば、過去3カ月間のアナリストレーティングは、「買い」が33人、「中立」が1人、「売り」が1人で、コンセンサス評価は「強気買い」です。平均目標株価の471.71ドルは、今後12カ月で12%の上値余地を示唆しています。

アルファベット

次に取り上げるのは、グーグルの親会社として知られ、ティル氏が「最も過小評価されている」AI関連銘柄と評するアルファベットです。マイクロソフトと同様、アルファベットも時価総額1兆9,000億ドルのメガキャップ企業で、上場企業としては世界第4位です。

アルファベットは、インターネット検索の開発と、そこから派生する収益化の成功によってその地位を確立してきましたが、最近のAIの発展を無視しているわけではありません。アルファベットの子会社には自動運転車ベンチャーのウェイモがあり、自動運転車の制御でAI技術に大きく依存しています。

クラウド上の大規模言語モジュール構築にAIを活用

また、アルファベットはグーグル・クラウド上の大規模言語モジュール構築にもAIを使用しています。これらはオンライン翻訳サービスであり、AIと自然言語処理の両方を使用して、明確なテキストの翻訳を提供し、複数の言語で新しいテキストの執筆を支援します。

投資家にとって特に興味深いのは、グーグル検索エンジンにAIを統合し、生成AI技術を使用したパフォーマンス・マックス・ツールを検索エンジンの広告キャンペーン機能に導入していることです。これにより、グーグル広告キャンペーンの収益が向上し、費用対効果を高める可能性があります。

生成AIで深刻な不具合が発生するも、素早く修正

なお、最近アルファベットは自社の生成AI Geminiで深刻な不具合がありましたが、修正可能であり、修正に素早く取り組んでいます。AIは将来的なものですが、今のところアルファベットの主な売上高はグーグルであり、この不具合による打撃はありません。

アルファベットの業績は堅調です。2023年第4四半期の売上高は863億ドルで前年同期比13%増となり、アナリスト予想を10億ドル以上上回りました。GAAP基準のEPSも1.64ドルと、予想を4セント上回りました。

オンライン検索における強力なポジション、生成AI導入の恩恵を享受へ

アナリストのティル氏は、アルファベットのオンライン検索における強力なポジションを、特に生成AI技術を採用する同社の将来の礎石と認識しています。同氏はアルファベットについて、「AI/ML技術のリーダーであり、数十億人のユーザーに生成AIを導入することで、消費者のビジネスチャンスから恩恵を受ける最適な立場にあると考えます」と述べています。

ティル氏は、アルファベットに「買い」レーティングを付け、175ドルの目標株価は、今後12カ月で13%の上値余地を示唆しています。

ウォール街の見方は?

TipRanksによれば、全体としては、アルファベット株の過去3カ月間のアナリストレーティングは、「買い」が29人、「中立」が8人で、コンセンサス評価は「強気買い」です。平均目標株価の165.37ドルは、今後12カ月で7%の上値余地を示唆しています。

メタ・プラットフォームズ

ジェフリーズのAI銘柄リストの最後は、フェイスブック、インスタグラム、メッセンジャー、WhatsAppの親会社であり、1兆ドル規模のハイテク・メガキャップ株の1つであるメタです。メタの現在の評価額は1兆2,700億ドルで、米株式市場で6番目に大きい企業です。

メタの最大の強みは規模の大きさです。最新の2023年第4四半期の決算報告によれば、ユーザー数は堅調に推移しています。同四半期末時点のデイリーアクティブユーザー数(Family DAP)は31億9,000万人、月間アクティブユーザー数(Family MAP)は39億8,000万人でした。これらの数字は、同社プラットフォーム全体のユーザー数を示し、メタが世界人口の約半分にリーチできる可能性があることを意味します。

メタ、AIをマーケティングやデバイス連携などで既に応用を開始

メタは、AIをマーケティングやデバイス連携など、様々な用途に応用し始めています。その中でも最も重要なのは、多言語翻訳を容易にするAIベースのシームレスコミュニケーション技術かもしれません。すでに多言語対応のソーシャルメディアプラットフォームへの応用は明白です。また、メタは様々な用途に使えるオープンソースのAI開発ツール「LLaMA」も生み出しています。

メタの業績は堅調です。2023年第4四半期の売上高は401億1,000万ドル、EPSは5.33ドルでした。売上高は前年同期比25%増で、アナリスト予想を9億4,000万ドル上回り、EPSは予想を39セント上回っています。

AIの可能性により、長期的成長にむけた明確な道筋を保有

ティル氏は、メタは長期的な成長に向けた明確な道筋を持っており、それは主に同社のAIの可能性によるところが大きいと指摘しています。「メタには、自社のアプリ群において、40億人近いユーザーに生成AIツールを導入するユニークな機会があると考えています。同社はすでに、ユーザーエンゲージメント向上と広告主のROI(投資利益率)を強化するためにAIを活用しています。また、私たちの調査によると、メタはすでに生成AIを活用した広告ツールを導入しており、成果を上げているようです」

ティル氏はメタ株に「買い」レーティングを付け、目標株価の550ドルは、今後12カ月で約11%の上値余地を示唆しています。

ウォール街の見方は?

メタ株の過去3カ月間のアナリストレーティングは、「買い」が40人、「中立」が2人、「売り」が1人で、コンセンサス評価は「強気買い」です。平均目標株価の530.58ドルは、今後12カ月で約7%の上値余地を示唆しています。

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ディスクロージャー

本記事は株式投資分析ツールTipRanksの許可を得て、Microsoft, Alphabet and Meta: Jefferies Selects the Best AI Stocks to Buy原文の翻訳を中心にまとめています。

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この記事のライター
金融コンテンツ・エディター兼翻訳者。 米国株など米国金融市場を中心に金融関連コンテンツの翻訳・作成にこれまで従事。 日本経済新聞社英文編集部門勤務を経て、約20年にわたり外資系金融機関などで金融関連コンテンツの翻訳・編集業務およびマーケティングサポートを担当。 米国の個人投資家向け金融メディア「モトリーフール」の日本語サイト(今は撤退)で、翻訳・編集業務を担当した経験もあり。 日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)
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