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最も高いリターンをあげられるヘルスケア株は?

ストーリーハイライト

ヘルスケア企業は一般的に、他のセクターの企業よりもマクロの逆風に強いです。ここでは、3つのヘルスケア銘柄に関するウォール街の意見を紹介し、最適な銘柄を選びます。

ヘルスケア企業はマクロ的な圧力から完全に免れるわけではありませんが、他のセクター企業と比べて一般的に回復力があります。これは、ヘルスケア企業が提供する医薬品やサービスが、人々にとって重要なものであるためです。さらに、いくつかのヘルスケア企業は、これまで満たされていない医療ニーズに対応するために様々な治療法を開発しており、これが長期的な成長の原動力になると期待されています。TipRanksの株式比較ツールを使って、アッヴィ(NYSE:ABBV)、ノボ・ノルディスク (NYSE:NVO)、イーライリリー (NYSE:LLY)を比較し、ウォール街のアナリストが最も魅力的なリターンを得られると見ているヘルスケア株を探しました。

アッヴィ (NYSE:ABBV)

アッヴィは米国のバイオ医薬品企業ですが、投資家は同社の大ヒット関節リウマチ治療薬「ヒュミラ」の独占販売権喪失の影響を懸念しています。2023年第3四半期のヒュミラの売上高は前年同期比36.2%減の35億5,000万ドルとなりました。しかし同社は、ヒュミラの売上減少の影響は、免疫治療薬SkyriziやRinvoqなど他の医薬品の売上増により軽減できると自信を持っています。

さらにアッヴィは最近、今後の成長を後押しすると期待される2つの大型買収を発表しました。同社は、ImmunoGen社を100億ドルで買収し、卵巣がん治療薬市場への参入を加速させます。今月初めには、Cerevel Therapeutics社を87億ドルで買収すると発表しており、この買収により神経学関連治療薬のパイプラインが強化されると期待されています。

アッヴィ株は「買い」か「売り」か?

12月11日に、ゴールドマン・サックスのアナリスト、Chris Shibutani氏は、アッヴィを「中立」から「買い」に格上げし、目標株価を173ドルとしました。同アナリストは、ヒュミラの売上は、複数のバイオシミラー(バイオ後続品)との競合にもかかわらず、予想以上に持ちこたえていると考えています。

過去3カ月間のアナリストレーティングは、「買い」が8人、「中立」が5人で、コンセンサス評価は「中程度の買い」です。平均目標株価の170.25ドルは、今後12カ月で11.1%の上値余地を示唆しています。株価は年初来で5%下落しています。配当利回りは4%です。

ノボ・ノルディスク (NYSE:NVO)

デンマークに本社を置くヘルスケア企業のノボ・ノルディスクは今年、大きく話題になっている減量薬のウェゴビーとオゼンピックにより好調な業績を上げました。2023年1〜9月期の売上高は前年同期比29%増の1,664億デンマーク・クローネとなり、営業利益は31%増の758億デンマーク・クローネでした。ノボ・ノルディスクの堅調な業績は、糖尿病・肥満症治療薬ポートフォリオの売上高が36%増加したことによってけん引されました。

今後、ノボ・ノルディスクは糖尿病治療におけるリーダーシップを強化し、2025年までに世界市場シェア3分の1以上を目指します。また、2025年までに肥満症治療薬の売上高250億デンマーク・クローネを目標としています。2023年1~9月期の肥満症治療関連の売上高は167%増の304億デンマーク・クローネでした。

ノボ・ノルディスク株の目標株価は?

12月初め、Cantor Fitzgeraldのアナリスト、Louise Chen氏は、ノボ・ノルディスク株のカバレッジを開始し、「買い」レーティングを付け、120ドルの目標株価を提示しました。Chen氏は、肥満治療薬の需要は今後も魅力的であると予想しています。このカテゴリーの売上(年換算)は、すでに100億ドル以上となっています。

同アナリストは、今後5~7年間で肥満治療薬の売上高が1000億ドルに成長すると予想しています。現在、肥満治療薬はイーライリリーとの2社独占状態ですが、ノボ・ノルディスクがリードしており、堅調な売上トレンドの「尋常ではない受益者」になるとChen氏は予想しています。

全体としては、過去3カ月間のアナリストレーティングは、「買い」が4人で、コンセンサス評価は「強気買い」です。116.67ドルの平均目標株価は、今後12カ月で21.3%の上値余地を示唆しています。株価は今年に入ってから42%以上上昇しています。

イーライリリー (NYSE:LLY)

米国に本拠を置く世界的製薬企業イーライリリーの株価は、承認されたtirzepatide(糖尿病と肥満症の治療に使用できる医薬品)をめぐる楽観論により、年初来で約60%上昇しました。しかし12月11日に、tirzepatideを使った減量薬Zepboundを服用した患者は約1年間で体重が約14%戻ったというデータが発表され、イーライリリー株は2.3%下落しました。

しかし、BMOキャピタルのアナリスト、Evan David Seigerman氏は、このデータは当初10月に発表されており、当時は好評だったと指摘しています。同氏は、治療後の体重増加に対する懸念は「誇張されすぎている」と考えており、株価の反落は買いの好機であると述べています。

最近の業績では、2023年第3四半期売上高は前年同期比37%増の95億ドルとなり、予想を上回りました。tirzepatideを使った糖尿病治療薬Mounjaroの好調な売上に加え、乳がん治療薬Verzenio、糖尿病治療薬Jardianceなど他の治療薬の売上が増加したためです。同社は、社内での医薬品開発や戦略的買収を通じて強化し続ける強固なパイプラインに支えられ、今後の道のりに自信を持っています。

イーライリリーは「買い」か?

12月12日に、モルガン・スタンレーのアナリスト、Terence Flynn氏はイーライリリー株の目標株価を722ドルから727ドルに引き上げ、「買い」レーティングを維持しました。Flynn氏は、北米バイオ医薬品セクターの2024年の見通しを示す一方で、「糖尿病」、製品サイクル、政策、金利という4つのテーマを強調しました。イーライリリーについては、「今年に続いて2024年もばらつきが予想される」とし、2020年代後半に成長を実現できる企業に引き続き注目するよう投資家に促しています。

過去3カ月間では、フリン氏を含め、19人のアナリストがイーライリリー株に「買い」レーティングを付けており、1人が「中立」で、コンセンサス評価は「強気買い」です。平均目標株価は650.17ドルで、今後12カ月で11.3%の上昇可能性を示唆しています。

結論

ウォール街は、ノボ・ノルディスクとイーライリリーには強気ですが、アッヴィには慎重な見方をしています。現在、アナリストは、減量薬に対する旺盛な需要により、ノボ・ノルディスクの株価がさらに上昇する可能性が高いと見ています。

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ディスクロージャー

本記事は株式投資分析ツールTipRanksの許可を得て、ABBV, NVO, or LLY: Which Healthcare Stock Could Generate the Highest Returns?原文の翻訳を中心にまとめています。

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この記事のライター
TipRanksの専属編集者兼翻訳者。 米国株など米国金融市場を中心に金融関連コンテンツの翻訳・作成にこれまで従事。 日本経済新聞社英文編集部門勤務を経て、約20年にわたり外資系金融機関などで金融関連コンテンツの翻訳・編集業務およびマーケティングサポートを担当。 米国の個人投資家向け金融メディア「モトリーフール」の日本語サイト(今は撤退)で、翻訳・編集業務を担当した経験もあり。 日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)
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