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低バリュエーションの先進国株式を投資対象とする高配当利回りETF

ストーリーハイライト

カンブリア・フォーリン・シェアホルダー・イールドETF(BATS:FYLD)は、先進国株式(除く米国)に投資する魅力的なETF(上場投資信託)で、配当利回りは6%です。高い配当利回り、分散されたポートフォリオなどのため、運用資産2億5,000万ドルのこのETFは魅力的です。

FYLD ETFの戦略とは?

米国株式を投資対象とするカンブリア・シェアホルダー・イールドETF(BATS:SYLD)は、「株主利回り」に焦点を当て、近年素晴らしいパフォーマンスを上げています。FYLDも同様に株主利回りに焦点を当てていますが、先進国株式(除く米国)に投資します。

カンブリアによると、FYLDは、配当、自社株買い、債務返済の3つの属性を通じて投資家に多くのキャッシュを還元している、株主利回りの高い先進国企業にフォーカスしています。

株主利回りは、これら3つの属性(配当、自社株買い、純債務削減)を加算し、企業の時価総額で割って計算されます。

ベンチマークより大幅に低いバリュエーションのポートフォリオを構築

株主利回りの高い国際株式に投資することで、FYLDのベンチマークであるMSCI EAFEインデックス(米国とカナダを除く欧州、オーストラリア・アジア、極東の国々を含む21の先進国市場の大型・中型証券のパフォーマンスを反映)よりも大幅に低いバリュエーションのポートフォリオを構築できます。

直近四半期末時点で、FYLDのポートフォリオのPER(株価収益率)はわずか7.6倍で、MSCI EAFEインデックス全体のPER13.8倍よりかなり低くなっています。そしてこれらのバリュエーションは、いずれも米国株より割安です。例えば、S&P500指数(SPX)のPERは現在22.4倍です。

また、FYLDの保有銘柄は、簿価よりも若干割安な水準で取引されていますが、MSCI EAFEインデックス構成銘柄の平均PBR(株価純資産倍率)は1.7倍です。

さらに、単に配当利回りの高い銘柄に投資するのではなく、良好な株主利回りを持つ銘柄に焦点を当てることで、「より魅力的な成長特性が得られ」、バランスシートがより健全になる可能性があることも、FYLDのもう一つの利点であるとカンブリアは述べています。

投資プロセス

低いバリュエーションと高い株主利回りを持つ国際株式のポートフォリオを構築するために、FYLDはかなり徹底した投資プロセスを採用しています。

ETFのポートフォリオ・マネジメント・チームは、時価総額2億ドル以上の海外先進国株式ユニバースに目を通すことから始めます。次に、これらの銘柄の中から株主利回りが最も高い上位20%の銘柄を選び、PER、PBR、PSR(株価売上高倍率)などの伝統的なバリュエーション指標に基づいてこれらの銘柄を評価します。

次に、ポートフォリオ・マネジメント・チームが、このリストの中から株主利回りとバリュエーションの組み合わせが最も魅力的な上位100銘柄を選定します。

このスクリーニング・プロセスは四半期ごとに再開され、ファンドは四半期ごとにリバランスされます。

FYLDの保有銘柄

この投資プロセスにより、FYLDはどのようなポートフォリオを構築しているのでしょうか?FYLDは101銘柄を保有し、上位10銘柄の保有比率は資産の15.0%に過ぎません。

以下は、TipRanksの保有銘柄ツールで作成したFYLDの上位10銘柄の概要です。

当ETFはあらゆる種類の国際株式に投資しており、エネルギー、基礎素材、金融など、一般的に割安なバリュエーションを特徴とするセクターへの偏りが目立ちます。

米国の投資家は、トップ10保有銘柄であるカナダのインペリアル・オイル(NYSE:IMO)や、英国のBP(NYSE:BP)やリオ・ティント(NYSE:RIO)をご存じでしょう。

トップ10にはシチズン時計やプレス工業も

トップ10には日本企業のシチズン時計やプレス工業も入っています。

直近四半期末現在、FYLDの最大のエクスポージャーは金融(23.9%)で、次いでエネルギー(20.9%)、資本財(18.0%)、素材(16.9%)です。

FYLDは地域的にも分散されており、日本への投資比率は22.7%で最大のエクスポージャーを占めています。その他、カナダ(14.0%)、英国(11.2%)、フランス(9.0%)、オーストラリア(7.2%)、香港(7.0%)などに投資しています。

高い配当利回り

FYLDの配当利回りは6%です。この利回りは、現在1.4%に過ぎないS&P 500指数の配当利回りの4倍以上です。また、バンガード・インターナショナル高配当利回りETF (NASDAQ:VYMI)やシュワブ・インターナショナル配当株ETF (NYSEARCA:SCHY)のような人気のある国際配当ETFの利回りよりも高く、それぞれ4.6%、4.0%です。

長年のパフォーマンスはまちまち

FYLDのパフォーマンスはまちまちです。ネガティブな面では、近年S&P 500指数をアンダーパフォームしています。プラス面では、過去3年と5年の間、国際先進国市場ベンチマークをアウトパフォームしています。直近四半期末現在では、FYLDの3年間の年率換算リターンは8.2%で、同時期のMSCI EAFEの年率換算リターン4.5%を軽々と上回っています。5年間では、FYLDの年率9.3%のリターンはベンチマークの8.7%を上回っています。

FYLDの経費率は?

FYLDの経費率0.59%は高い方ですが、アクティブ運用ETFや国際投資ETFとしては突出した水準ではありません。

この経費率は、投資家がファンドに1万ドル投資した場合、年間59ドルの手数料を支払うことを意味します。ファンドが今後年率5%のリターンを上げ、0.59%の経費率を維持すると仮定すると、この投資家は最初の1万ドルの投資に対して5年間で329ドルの手数料を支払うことになります。

結論:強力な国際投資ETFオプション

S&P500指数に対してFYLDのパフォーマンスが劣るのは、FYLDが国際的に投資しているためであり、FYLDのコントロールの及ばないところであり、国際市場は長年にわたり米国市場を打ち負かすのに苦労してきました。それでも、このETFは過去3年と5年の間、国際先進国株式ベンチマークを上回っており、国際先進国市場に対する分散投資としては良い方法の1つと考えられます。

免責事項

ディスクロージャー

本記事は株式投資分析ツールTipRanksの許可を得て、FYLD: Seeking International Stocks and High Yield? Check Out This ETF原文の翻訳を中心にまとめています。

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この記事のライター
金融コンテンツ・エディター兼翻訳者。 米国株など米国金融市場を中心に金融関連コンテンツの翻訳・作成にこれまで従事。 日本経済新聞社英文編集部門勤務を経て、約20年にわたり外資系金融機関などで金融関連コンテンツの翻訳・編集業務およびマーケティングサポートを担当。 米国の個人投資家向け金融メディア「モトリーフール」の日本語サイト(今は撤退)で、翻訳・編集業務を担当した経験もあり。 日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)
米国株投資の銘柄分析はTipRanks
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