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航空宇宙・防衛関連ETFでポートフォリオに守りを

ストーリーハイライト

「iシェアーズ米国航空宇宙・防衛ETF(BATS:ITA)」は米国籍のETF(上場投資信託))で、武力紛争がますます拡大する世界において、投資家のポートフォリオを守る有用なヘッジとして機能するとみられます。同ETFが保有する銘柄は、大きな「堀(競合優位性)」を持つ強力な事業であり、その多くは妥当なバリュエーションで取引されています。

iシェアーズ米国航空宇宙・防衛ETF(IAT)の戦略とは?

iシェアーズによれば、「iシェアーズ米国航空宇宙・防衛ETF」は、航空宇宙・防衛セクターの米国株式で構成される指数の投資結果に連動することを目指します。このETFは、投資家に「民間航空機や軍用機、その他の防衛装備品を製造する米国企業へのエクスポージャー」を提供することを目的としています。

世界中で激化する紛争、防衛装備品の需要引き続き高く

残念ながら、世界の多くの地域で武力紛争が激化しており、防衛装備品に対する需要は引き続き高いはずです。

ロシアとウクライナの戦争は、欧州では大規模で長期化する陸上戦争に発展しています。欧州の他の地域では、あまり報道されていませんが、係争中のナゴルノ・カラバフ地域をめぐってアルメニアとアゼルバイジャンの間で高い緊張が続いています。

中東は悲しいことに紛争のホットスポットであり、ガザにおけるイスラエルとハマスの戦争は、この地域において他の当事者も巻き込んだ大きな紛争に発展する可能性があります。また、メディアはあまり報道しませんが、中東やアフリカでも大きな紛争が続いています。

アジアの南シナ海では、中国と近隣諸国との間で多数の領有権争いがあり、米外交問題評議会のグローバル・コンフリクト・トラッカーは、台湾をめぐる米中対立の可能性を「悪化している」と分類しています。

紛争がエスカレートすれば主要株価指数下落の可能性も

破壊と人命の損失だけでなく、これらの紛争がエスカレートしたり、他の地域大国が戦闘に巻き込まれるような波及効果が生じたりすれば、世界経済に深刻な混乱をもたらし、主要株価指数の下落を引き起こす可能性があります。

こうした紛争で必要となる防衛システム、武器、その他の装備を製造する企業である航空宇宙・防衛株をカバーするITAのようなETFを保有することは、投資家にとってこういったリスクをヘッジする一つの方法となるでしょう。

iシェアーズ米国航空宇宙・防衛ETF(IAT)の保有銘柄

IATの保有銘柄数はわずか35で、上位10銘柄でファンドの76%以上を占めています。

以下では、TipRanksの保有銘柄ツールを使って、ITAの上位10銘柄の概要を確認できます。

ETFの中では、いくつかの大型防衛・航空宇宙企業が大きなポジションを占めていることに注意してください。トップのRTX (NYSE:RTX)は18.4%のウェイトを占め、ボーイング(NYSE:BA)は16.6%のウェイトを占めています。ロッキード・マーチン(NYSE:LMT)は8.1%です。

通常、こういった分散不足は問題となり得ますが、このETFは防衛セクターに対する単一セクターの見解を示すために使用されるため、この懸念は緩和されます。さらにITAは、大規模な紛争にエスカレートして株式市場全体のバリュエーションが脅かされるような事態に備えた、バランス型ポートフォリオの一部としてのヘッジ、あるいは「保険」と考えられます。

堅実な長期パフォーマンス

ITAの良い点は、長期的に堅調なパフォーマンスを上げてきていることです。その実績は、今後も投資家に堅実なリターンを提供できる可能性を示唆しています。

例えば、過去3年間では、14.3%という素晴らしい年率トータルリターンを創出してきました。5年間の年率換算リターンは3.9%で、それほど目覚ましいものではありませんが、10年間を振り返ると、9.8%の年率換算リターンを創出しています。さらに、2006年の設立以来、年率10.0%のリターンを上げてきています。長期間にわたって年率2桁のリターンを上げている株式やETFに投資することは、ポートフォリオを複利運用する素晴らしい方法です。

強力な堀と控えめなバリュエーション

このETFが好業績をあげているのは、航空宇宙・防衛関連企業が大きな堀(競合優位性)を持つ強力な企業であるためです。航空宇宙・防衛機器は技術的に高度で、製造にはかなりの専門知識が必要です。それだけでなく、かなりの資金力と研究開発(R&D)投資が必要なため、参入には大きな障壁があります。

さらに、ロッキード・マーチンやRTXのような企業は、米国政府・国防総省との長年にわたる強固な関係を築いており、新規参入企業がこれらの既存企業を出し抜くことは困難です。

このような強みがあるにもかかわらず、上位の航空宇宙・防衛関連銘柄の多くは、バリュエーションが法外に高いわけではありません。例えば、RTXの2023年業績予想に基づくPER

(株価収益率)は16.5倍で、ロッキード・マーチンも16.5倍程度で、S&P 500指数 (SPX)構成銘柄の平均PERを下回っています。

妥当な経費率

ITAの経費率は0.40%と、ETF全体で見た場合には中程度です。これは、1万ドルをIATに配分する投資家が、1年目に40ドルの手数料を支払うことを意味します。経費率が0.40%のままで、ファンドが今後年率5%のリターンを上げると仮定すると、この同じ投資家は10年間で505ドルの手数料を支払うことになります。

アナリストによれば、ITAは「買い」か?

過去3カ月間のアナリストレーティングは、「買い」24人、「中立」9人、「売り」2人で、コンセンサス評価は「中程度の買い」です。平均目標株価126.13ドルは、今後12カ月で11.9%の上値余地を示唆しています。

今後の見通し

ITAは長年にわたり、強力な複利運用ツールとして堅実な実績を積み上げてきました。保有銘柄の多くは、本物の堀を持つ強力な企業であり、またその多くが非常に合理的なバリュエーションで取引されています。経費率は決して安くはありませんが、法外に高いわけでもありません。

保有銘柄の性質(米国の航空宇宙・防衛関連銘柄)から、ITAは武力紛争が激化する世界において有利なポジションにあると思われます。さらに大きな戦争が勃発し、株式市場が混乱した場合には、投資家のポートフォリオの価値を守るのに役立つ可能性があります。その一方で、もしこのような事態が起こらなかったとしても、ITAは長年そうであったように、投資家のために素晴らしいリターンを上げ続ける可能性が高いと思われます。

免責事項

ディスクロージャー

本記事は株式投資分析ツールTipRanksの許可を得て、ITA: Defend Your Portfolio with This Aerospace & Defense ETF原文の翻訳を中心にまとめています。

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この記事のライター
金融コンテンツ・エディター兼翻訳者。 米国株など米国金融市場を中心に金融関連コンテンツの翻訳・作成にこれまで従事。 日本経済新聞社英文編集部門勤務を経て、約20年にわたり外資系金融機関などで金融関連コンテンツの翻訳・編集業務およびマーケティングサポートを担当。 米国の個人投資家向け金融メディア「モトリーフール」の日本語サイト(今は撤退)で、翻訳・編集業務を担当した経験もあり。 日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)
米国株投資の銘柄分析はTipRanks
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