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ウォール街アナリストが推す素材セクターのバリュー株3銘柄

ストーリーハイライト

経済がどのように変化しようとも、基礎的な素材を必要とします。建設資材から工業用・農業用化学品、コンピュータ・プロセッサ・チップの原材料に至るまで、素材セクターは私たちの生活のほとんどすべての基盤を形成しています。

長期投資家にとって、素材セクターは堅実な選択肢です。コモディティ市場の価格上昇、高金利による信用収縮、複数の産業における需要の鈍化など、近年の逆風にもかかわらず、素材は真の価値を求める投資家にとって、依然として最重要セクターです。株価が下落する一方で、素材業界の多くの分野では見通しが高まっています。

バリュー株の観点から素材株のポジション構築を選好

ウォルフ・リサーチの素材担当アナリスト、クリス・パーキンソン氏の見解も同様です。同氏は、素材セクターの最近のアンダーパフォームを指摘しつつ、バリュー株投資家がこの分野を詳しく見るべきと述べています。

同氏は、「素材株は過去12カ月間、S&P500指数を大きくアンダーパフォームしており、相対ベースでは5年平均をわずかに下回っています。しかし、私たちは、あまり大局的な見方は避けたいと考えています」と述べ、バリュー株の観点からのポジション構築を勧めています。

そして、パーキンソン氏は具体的な銘柄をピックアップしています。TipRanksのデータベースを利用して、これらの銘柄に関するウォール街の見方を調べました。以下で説明します。

コルテバ (CTVA)

まずは農業素材と化学の世界からです。コルテバは、種子と農薬の世界市場で重要な企業であり、農家の耕地単位当たりの生産性と一般的な生産高を増加させるように設計された幅広い製品を製造しています。コルテバの製品ラインは多岐にわたり、化学部門では殺虫剤、除草剤、殺菌剤、農作物部門ではパイオニアやブレバントのブランド名で販売されている高性能種子を取り扱っています。同社の顧客にとっての目標は、農業生産の最大化です。

必要不可欠な産業で主導的な役割を担い、世界中に拠点を持つ強固な顧客基盤を誇るにもかかわらず、コルテバはここ数四半期、前年同期比で売上高が減少していました。同社の株価はこれを反映し、過去12カ月で14%以上下落しています。とはいえ、明るい兆しも見えています。

2024年の良好な見通し発表で株価急騰

2月初旬、コルテバの株価は2023年第4四半期決算および2023年通期の決算発表を受け急上昇しました。経営陣は、2024年の売上高を174億ドルから177億ドルの範囲と予想しており、中間値では小幅ながら前年比実質2%増となります。この明るい予想に加え、同社の第4四半期決算は売上高、利益とも予想を上回り、投資家が決算発表を消化した時点で株価は約19%急騰しました。

「依然として実質的に過小評価」

パーキンソン氏にとっては、コルテバはトップピックです。同氏は、「2024-2025年の業績見通しに基づけば、コルテバは依然として実質的に過小評価されていると考えています。5年平均のPER(株価収益率)20倍前後に対して、18倍で取引されています」と述べ、安定した経営執行、マージン改善などを考慮すると、バリュエーションはPER20倍を超えると予想しています。

これにより、パーキンソン氏は、コルテバに対して「アウトパフォーム(=買い)」レーティングを付けており、67ドルの目標株価は、今後12カ月で25%の上値余地を示唆しています。

ウォール街の評価は?

TipRanksによれば、過去3カ月間のアナリストレーティングは、「買い」が15人、「中立」が4人で、コンセンサス評価は「強気買い」です。平均目標株価は61.61ドルで、今後12カ月で15%の上値余地を示唆しています。

CFホールディングス (CF)

次に紹介するのは、エネルギーと農業の両業界をカバーする素材プロバイダー、CFホールディングスです。同社は、クリーンエネルギー、産業排出物の削減、農業用肥料など、様々な分野で重要な水素・窒素製品の製造において世界的な存在感を示しています。同社は北米全域に輸送、貯蔵、流通施設の広範なネットワークを有し、米国、カナダ、英国に製造インフラがあります。

CFホールディングスの製品ラインには様々な化学品があり、その多くは複数の用途に使用されています。中でも、燃料と肥料の両方に使用されるアンモニアとその誘導体、固形窒素肥料である粒状尿素、液体肥料の一種である硝酸尿素アンモニウム(UAN)、ディーゼルエンジンの排ガスを低減する選択触媒還元システムに使用されるディーゼル排ガス液が有名です。同社の製品生産量に占める割合は、肥料製品の方が大きいです。

売上高は減少傾向にあったが、2023年通期では18億ドルにおよぶフリーキャッシュフローを創出

ここ数四半期、CFの売上高は減少傾向にありました。2023年第4四半期の売上高は15.7億ドルで、前年同期比40%減でしたが、予想を7,000万ドル上回り、前四半期比では23.6%増でした。GAAP基準のEPS(1株当たり利益)は1.44ドルで、予想を16セント下回りました。なお、2023年通期では18億ドルのフリーキャッシュフローを創出しました。

パーキンソン氏がCFに注目するのは、業界をリードする企業であり、投資家にとって確かなチャンスであるということです。同氏は、CFは世界の窒素関連業界で最高の企業であり、世界の肥料企業の中でトップクラスのフリーキャッシュフロー・プロファイルを有している、と強調しています。

パーキンソン氏は「アウトパフォーム(=買い)」レーティングを付け、99ドルの目標株価は、今後12カ月で24%の上値余地を示唆しています。

ウォール街の評価は?

CFに関する過去3カ月間のアナリストレーティングは、「買い」が6人、「中立」が5人、「売り」が1人と分かれており、コンセンサス評価は「中程度の買い」です。89.58ドルの平均目標株価は、今後12カ月で12%の上値余地を示唆しています。

インテグリス (ENTG)

最後に紹介するインテグリスは、素材とハイテクの両方に密接に関わる製造会社です。マサチューセッツ州に本社を置き、米国全土、東アジア、欧州、中東に拠点と施設を持つインテグリスは、半導体製造に不可欠な複数の製品を提供しています。同社の製品は、半導体製造におけるいくつかの「ボトルネック」問題を解決するだけでなく、半導体製造プロセスにおいてシリコンウエハーの品質と純度を維持するために必要な特殊環境を作り出します。

様々な半導体製造関連ハードウェアと化学製品を生産

具体的には、インテグリスの製品は、ハードウェアと化学薬品の2つに分けられます。ハードウェアには、ろ過製品、ガス供給システム、液体システム、ウエハーキャリア、最終製品の移動に必要なシッパーやトレイが含まれます。化学面では、無菌環境を維持するために必要なガスや流体、製造された半導体に高純度の表面を形成するためのコーティング剤、ハイエンド用途向けの高級グラファイトや炭化ケイ素などの材料があります。

上述の他の企業とは対照的に、株価は過去1年間で66%上昇しており、堅調です。

そして、事業の状況は健全です。2023年第4四半期決算では、売上高と利益の両方でアナリスト予想を上回りました。売上高は8億1,200万ドルで、前年同期比14%減ながら予想を3,100万ドル以上上回りました。非GAAPベースのEPSは65セントで、予想を7セント上回りました。

半導体製造プロセス全体でのシェア拡大を評価

この予想を上回る業績と株価上昇の組み合わせから、パーキンソン氏はこの銘柄を強気の見方で捉え、厳密にはバリュー株ではないものの、彼の素材株リストに加えました。同アナリストはインテグリスについて、業界最高の競争力により、半導体製造プロセス全体でシェアを引き続き拡大している点を挙げています。

パーキンソン氏は、「アウトパフォーム(=買い)」レーティングを付け、目標株価の160ドルは、今後12カ月で14%の上値余地を示唆しています。

ウォール街の評価は?

インテグリスの過去3カ月間のアナリストレーティングは、「買い」が7人、「中立」が3人で、コンセンサス評価は「中程度の買い」です。平均目標株価の144.71ドルは、今後12カ月で3%の上値余地を示唆しています。

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ディスクロージャー

本記事は株式投資分析ツールTipRanksの許可を得て、Searching for Value Stocks? Wall Street Analyst Recommends 3 Picks in the Materials Sector原文の翻訳を中心にまとめています。

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この記事のライター
金融コンテンツ・エディター兼翻訳者。 米国株など米国金融市場を中心に金融関連コンテンツの翻訳・作成にこれまで従事。 日本経済新聞社英文編集部門勤務を経て、約20年にわたり外資系金融機関などで金融関連コンテンツの翻訳・編集業務およびマーケティングサポートを担当。 米国の個人投資家向け金融メディア「モトリーフール」の日本語サイト(今は撤退)で、翻訳・編集業務を担当した経験もあり。 日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)
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